極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
「そうですか? ありがとうございますぅ」

 デレデレとした笑顔に加えて声もワントーン、いやツートーンくらい高くなっている母親。完全に金持ちの男に取り入ろうとする女そのものに見えてしまう。頼むからしっかりしてほしい所なのだが。

「すみません、急に訪ねてしまって。ぜひご挨拶したいと思いまして」
「いえ全然。旦那がいなくてすみませんねえ……」
「また別日にこちらお訪ねしても構いませんでしょうか?」
「勿論勿論! ぜひ来てください!!」

 最後、母親はなんと玲に握手を求めた。玲はにこやかな笑顔を持って握手をしてくれた。それで母親は顔を赤らませて恍惚とでも言うようなそんな表情を浮かべていた。
 結果的に今日は自宅で寝泊まりする事になったが、明日からはあの高級住宅街の家で生活する事も決まった。母親はそちらへ行っても構わないかと図々しく尋ねていたが玲は機嫌を害する事なくOKの返事を出していたのだった。
 私は母親と共に玄関で玲を見送る。

「今日はありがとうございます。玲さん」
「ええ。明日仕事終わったらマッサージしますね」
「いいんですか?」
「勿論。ぜひ。あと連絡先交換しませんか?」
「そうですね。玲さん交換しておきますか」

 スマホを出して連絡先を交換し玲が車に乗って去っていった後。母親は玄関で私に彼はマッサージが出来るの? と問う。なんだか嫌な予感がしたが私は正直に出来ると告げる。

「ええーー私もマッサージしてもらおっかなぁ」
「そう言うと思った」
「だって雪乃だけずるいわ。私も肩凝ってるんだからしてもらいたいーー」
「お父さんにしてもらいなよ」
「えーーそれはやだ」
「はあ……」
(めんどくさ)

 その後。私はお風呂に入るとパジャマに着替えて自室でスマホをいじりつついつもより早めに就寝する事にした。夜更かししようかとも考えたが、やっぱり疲れは取っておきたい。それに明後日のパーティーの事も考えると体調はちゃんと整えた方が良いと考えたからだった。

< 51 / 146 >

この作品をシェア

pagetop