バレンタインと恋の魔法
杏ちゃんは人見知りの私が唯一友達と呼べる存在だ。



「男子には?」


「え?あ、あげないよ…!あげられる人いないもん…」


「そうなんだ。朝比奈さん可愛いしモテるから、いいなって思ってる男子くらいはいると思ってた」


「そ、そんな…好きな人なんてできたことないし…」



反応に困ってゆるく巻いたかのようになっている腰まである天パの毛先をいじりながら、もごもごと口を動かす。



そういう瀬名くんこそ、多分クラスの半分の女子から好意を持たれている気がする。


クラスだけでなく、他クラスや上級生にまで持ち前の明るさで人気を集めている。


そんな風にたくさんの人から好かれている瀬名くんには、純粋に尊敬だ。



「実は俺、好きな人がいるんだ」


「…え?」


「だからその人からバレンタインのお菓子もらいたいけど、どうかなー。俺の片想いだし」



誰からも好かれている瀬名くんがまさか片想いをしているなんて、驚いた。


相手はどんな子なんだろう。きっと瀬名くんに似てみんなから好かれるような可愛い人なんだろうな…。



「そうなんだ…。もらえるといいね」



誰?なんてそんな踏み込んだことを聞けるはずもなく、当たり障りのない返しをして卵焼きを口に入れた。
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