バレンタインと恋の魔法
ティラミス
当て馬の私だって、君の特別になりたかった。





瀬名くんを好きになったのは、冬休みが明けて一週間くらいが経った頃だった。



「姫宮さんって絵本とかに出てくるお姫様みたいな雰囲気あるよね」



席替えでたまたま隣の席になって、いつも男子にしているみたいににこっと笑いかけたら瀬名くんにそう言われた。


…多分あれには特別な意味なんて何もないんだと今ならわかる。


瀬名くんはそういうことをさらりと言えちゃう人だから。だから彼はみんなから好かれるんだ。



だけどその時の私は、男子から可愛く見られたいという女の本能みたいな生き方をしていて、男子からも女子からもあざといと言われていたから純粋に可愛いと言われた気分になった。


嬉しかったんだ。


それにみんなから好かれるような瀬名くんに元から憧れてもいたから、それが恋心に変わっただけ。



だから私は頑張った。今以上に女子力を磨き、瀬名くんに可愛いと思ってもらえるように話し方や仕草まで研究した。



瀬名くんはそれはそれはモテていたけど、私が絶対に瀬名くんと付き合うんだ、と謎の自信まであった。





「…げ」



ダイエットをここ二週間くらい続けていたけど、そろそろ甘いものが食べたくなって夜のコンビニにでかけたある日のことだった。


家が近所なのか、同じくスウェット姿の久遠涼介(りょうすけ)がスイーツコーナーでプリンを両手に突っ立っていた。


どうやらただのプリンと、焼きプリンで悩んでいる様子。
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