バレンタインと恋の魔法
バウムクーヘン
私にはずっと大好きな幼なじみがいる。





「でさ、この絵梨先輩がめっちゃくちゃ可愛いんだよ。わかるか皆川(みながわ)!」



おそらく盗撮したであろう好きな人の写真を堂々と見せてくる桐ヶ谷とは、最近席が隣になってからよく話すようになった。


気が合うのはきっとお互い大好きな人がいるからだ。



「ふーん、確かに熊谷生徒会長は美人だけど、うちの(りゅう)くんも負けてないし!」



ロック画面にしていた大きなあくびをしている可愛い十歳年上の幼なじみ、綿谷流星(わたやりゅうせい)を見せる。



流くんは私の隣の家に住んでいて、小さい頃からよく遊んでもらっていた。


もう今は一人暮らしをしているから離れちゃったけど、休みの日には実家に帰ってきてくれるからたまに会っている。



「流星さんだっけ。大人っぽくてかっこいいよなー」


「でしょでしょ!?しかも歯科衛生士なの!もーかっこいいよね、できる男って感じで!流くんに口の中見られるのは恥ずかしすぎてまだ一度もお店の方には行けてないんだけど、仕事してる姿は見に行ったことある!やっぱりかっこよかった!」



受付のお姉さんや待合室にいた子どもとおばあちゃんまでもが流くんにうっとりしていたっけ。



「はっ、あの黒髪ロングは絵梨先輩だ!おーい!えっりせんぱーい!」



窓の外を見ていた桐ヶ谷が、これから体育なのであろう女子の先輩の群れの中にいた熊谷先輩に向かって大きく手を振っていた。


熊谷先輩は桐ヶ谷に気づくと、顔を真っ赤にしながらしーっと人差し指を唇に当てて怒っていた。
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