嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

「もう一度、順を追って考えよう。二年前、悪評が立つことでリーゼロッテは婚約破棄され、俺と結婚することになった。これで得をしたのは誰だ?」
「一番得したのは、間違いなくテオだろうな。棚ぼたですごい美人の公爵令嬢を嫁にもらった」

 腕を組んで真顔でそう言うカルロを、テオドールはじろりと睨み付ける。

「そんなマジな顔で怒るなよ。冗談だよ」

 カルロは肩を竦める。

「真面目な話をすると、考えられる人物像はみっつだ。ひとつめは、奥様のことを密かに想っていた男。他の男にとられるのが許せず、悪評を流すことで嫁の貰い手をなくして自分が奥様を娶るチャンスを狙っていた。ふたつめは、奥様のことが嫌いな人。嫌いな相手の悪評が広まるばかりか、結婚直前に婚約破棄に追い込むことができてさぞかし愉快だろう」
「みっつめは?」

 テオドールはカルロに尋ねる。

「そりゃあ、奥様の元婚約者が好きだった女だよ。恋した相手が自分以外と結ばれるのが許せなくて、婚約破棄に追い込んだ。女の嫉妬は恐ろしいんだぜ? 幻獣騎士団でも、浮気がばれて──」

 カルロは自分の部下の痴話げんかの話を始める。そのほとんどを聞き流しながら、テオドールは考え込む。

「リーゼロッテを好きな男、リーゼロッテが嫌いな人、リーゼロッテの元婚約者が好きな女か……。彼女を好きな男の仕業ならば、ラフォン辺境伯夫人になると知った段階でなんらかの動きを見せるはずだ。よって、この線はないだろう。となると、リーゼロッテを嫌っている。もしくはリーゼロッテの元婚約者を好きな女だな」
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