政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「そうなんですね」


仕事なら仕方がない。なにしろ貴俊は日本を代表する大企業の次期社長なのだから。


『本当に申し訳ない』
「大丈夫です。お忙しいでしょうから」
『俺から誘ったくせに本当にごめん』
「そんな、気にしないでください」


必要以上に謝罪を繰り返す貴俊をなんとか制し、ベッドに乱雑に置かれた洋服をさっと見る。

(パーティに着ていけそうなものはないけど、この際、リクルートスーツにコサージュをつければなんとかなるかな……。でもそれじゃ、地味過ぎる?)

瞬時に頭の中で葛藤していると、貴俊がすかさず代替え案を提示した。


『友人が経営しているセレクトショップがあるんだけど、明花、ひとりで行ける?』
「貴俊さんのお知り合いのお店にひとりで? ……はい、場所さえわかれば」


本音を言えば心細いが、わがままは言えない。この結婚は雪平ハウジングを守るためなのだから。

電話の向こうから貴俊がほっとしたような気配が漂ってきた。
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