嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

39

「このサンドイッチ、美味しいわ」

「ああ、美味しいね。ロレッテ嬢、ボクのも食べてみて」

 オルフレット様のタマゴサンドと交換して食べる、タマゴがたっぷりの、サンドイッチは手作りソースが美味しかった。

「このソース好きですわ」
「僕も好きだ。どのサンドイッチも食べ応えがあって良い」
 
「オルフレット様、ロレッテ様、食事中失礼します。私はリラと書庫に資料を取りに行ってきます」

「わかった」

 酷いことを言う、メアリスさんに合わせないよう、キッチンで作業してもらっていたリラを連れてカウサ様は書庫に行った。しばらくして私達の食事も終わり、執務に戻るオルフレット様。

 ロレッテは食事の後片付けと、足元に散らばる足跡が残る書類を集めようとした。

「ロレッテ嬢、その書類は拾わなくていいよ」

〈彼女達の領収書だ……そんなものを手にしたら、ロレッテの綺麗な手が汚れてしまう〉

(これは、メアリスさんの領収書?)

 王都の一流とされる高級店での買い物の領収書、そこでかなりな額を使用している事がわかった。

「まあ――ドレス一着にこの値段って、宝石をいくつ使用しているのかしら?」

「だろう、驚く金額だよね」

「そうですわね。他の貴族の方でも、一度にこれ程の金額は使いませんわ」

〈そうだ、僕でさえもうそんな額は使わない。使うとしらロレッテとの結婚式に使いたい。ウェディングドレスと、僕好みのナイトドレスをプレゼントしたいな〉

(ウェディングドレスと……オルフレット様の好みのナイトドレス⁉︎)

 その声には続きがあった。

〈ロレッテの肌が透けて、生地の面積は小さく……ま、まずい、本人を前に妄想してしまった……〉

 小さく、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
 もう、それにドキッとして頬が熱く感じる。

「わ、私、紅茶を淹れて来ます」
「ああ、頼むよ」

 隣の部屋に移動して頬を抑え、深呼吸を何度かして落ち着き。オルフレット様に紅茶を入れようとしたが、ロレッテはまだ火の扱いが出来なかった。

(しまった、私まだコンロの扱いが出来ませんわ)

 扉をそっと開けて覗くと、オルフレット様と瞳がかち合い、優しい瞳で見つめられた。

「どうしたの、ロレッテ嬢?」

「あの、オルフレット殿下ごめんなさい……私、リラが居ないと火を扱えませんでした」

「そうなのかい? いいよ、ちょっと待っていてね」

 オルフレット様は今見ている書類を、机に置いて立ち上がった。

〈頬を赤く染めて、困るロレッテの顔は可愛いなぁ!〉
(……⁉︎)

「ロレッテ嬢、僕と一緒に紅茶を入れよう」

「あっ、でも」

「心配いらないよ、今日の分の書類は終わっているからな」

 一緒に横に並び紅茶を淹れて、クッキーを用意した。
 もちろん用意したのは、オルフレット様の好きなバタークッキー。

「クッキー美味しそうだね、一枚欲しいな」

 あーんと開けた口にクッキーを一枚取り、彼の口元に持っていく。

「ん、ロレッテ嬢、美味しいよ」

「ほんとですか? よかった……私もお手伝いをしましたの。たくさん作ったので食べてください」

〈嬉しそうだな、ロレッテ〉
(あっ⁉︎ また、やってしまいましたわ)

 嬉しくなるとつい興奮して、彼に詰め寄りお喋りにもなり、押し付けがましくもなってしまう。

〈ロレッテの、この姿は僕だけしか知らない。クッ、顔がにやける〉
  
 心の声と。

「だから、美味しいんだね」

 最高の笑顔を見せてくれた。
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