嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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「オルフレット様、お待たせしました。後はリラが見回ってくれます……あの、オルフレット様?」
 
 ホールでお待ちになっている、オルフレット様に声をかけた。

「…………」

(あれ? 聞こえていらっしゃらない?)

 彼の側には側近のカウサ様はおらず、オルフレット様は何かお考え中なのか壁の方を向いて立っている。どうしたのかしら? と声をかけようとした。

〈お、落ち着くんだボク。ここに来るまで、馬車の中でカウサと練習したではないか。一緒に……これでいいかな? いや、まだ別の誘い方の方がいいか……〉

(誘い方?)

「あの、オルフレット様どうなされました?」

〈来た……よし、ロレッテに言うぞ!〉
(はい?)

 オルフレット様は何かを伝えたいのか、こちらを向いた彼はいつにも増して、真面目な表情を浮かべロレッテの肩をがっちり掴んだ。

「ロ、ロレッテ嬢、僕のとった宿について来てはくれないか。ロレッテ嬢とい、一緒に過ごしたい」

 夜を過ごす⁉︎

「オルフレット様と、一緒の夜を過ごすのですか?」

 それは衝撃なことだった。

 ぼっ、ぼっ、ぼっ、音が聞こえるくらい、オルフレット様の申し出に驚き、一気に頬が熱くなる。

〈ああ、ロレッテが……トマトのように真っ赤になった可愛い。その可愛い頬にキスしたい〉
 
(私の、トマトの様な頬にキスしたい?)

「僕と一緒は、だめかな?」

(……だ、だめじゃないですわ)

 そう、伝えたいのに言葉にならなくて。でも伝えたくて、必死にオルフレット様の顔を見て首を横に振った。ロレッテの気持ちがオルフレット様に通じたのか、彼の瞳がうれしげに細まった。

〈よかった、断られなくて〉
(オルフレット様からの誘いは断りませんわ……嬉しい)
 
「後はカウサとリラに任せて、少し夜の王都の中を散歩しないか?」

 オルフレット様は私に、行こうと手を差し出した。

「夜の王都を散歩ですか?」

「うん、普通のときなら周りの目があって出来ないけど、今のお互いの姿なら誰も気付かない。それに、こんなチャンスは2度と無いかもしれない。ロレッテ嬢、宿まで王都を探索しながら歩きませんか?」
 
「はい! よろこんで、オルフレット様」

 おさげの髪、メガネとワンピース姿のロレッテは。
 執事姿のオルフレット様の手を、ウキウキと握り返した。
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