888字でコワイ話

第5話「小夜ちゃんはどこに」








うちのクラスに転校生がきた!

東京から来たばかりで、前に子役をやっていたという。

小夜ちゃんは、可愛くて話も面白くて、あっという間にクラスの人気者になった。

ある日の放課後、小夜ちゃんが女子だけでゲームをやろうと言い出した。

流行りの映画に似せたゲームで、紙に書いた人間をハサミでいくつかに切って、校内に隠し、それをたくさん見つけた人が勝ちというゲーム。

都会の子が考えることは変わってるなあ、と思ったけれど、皆、小夜ちゃんに対する憧れや、もっと仲良くなりたい気持ちが強くて、あまり気にしなかった。

小夜ちゃんが絵を書いた。

鉛筆で何度もグリグリやった、ちょっと気持ち悪い絵だ。

夏美ちゃんが、さすが芸能人というので、私もそうかもと思った。



「最初は私が隠すから、皆は探してね」



私達が教室で待っている間、小夜ちゃんが校舎に絵を隠して回った。



「もういいよ! 制限時間は夕方五時のチャイムが鳴るまでね」

「どこから探そう!?」

「トイレは絶対あるはず!」



私達は散らばって、思い思いの場所を探した。

その時よく考えれば、私達が紙に書かれた体の一部を探し回っている間、小夜ちゃんは一人で待つことになってしまうと気がついたはずだった。

きっと、一人じゃ何も面白くなかったはず。

だから、チャイムが鳴って教室に戻った時、小夜ちゃんがいなかったのは、きっとつまらなくなって帰ってしまったんだろうと思い込んでしまったのだ。



翌朝、担任の矢田先生が私達に怖い顔で聞いた。

「新村小夜さんと別れたのはいつ?」

小夜ちゃんがいなくなった。
小夜ちゃんのママや警察が来て、私達は皆で放課後ゲームをやったことを話した。
小夜ちゃんのママが青ざめた。



「あの子は精神不安だったんです……。それで芸能界もお休みして……。あの子は消えたがっていたんです……」



私達は急に怖くなった。
その日以来、皆、小夜ちゃんのことをあまり口にしなくなった。
あのとき全部を見つけられなかった絵も、もう探す気になれなかった。



結局私達が小学校を卒業する日が来ても、小夜ちゃんは見つからなかった。

なぜか私は……。
あの校舎のどこかに今も小夜ちゃんが隠れているような気がする……。

                                                                                                          


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