888字でコワイ話

第6話「ゆめのミズリーランド」






眼鏡屋の福引でミズリーランドの券が当たった!

次の休みに行こうって約束したのに。

急な仕事で行けない?

おおうそつき!

約束を守らないパパとママなんか、いらないよ!



僕は黙って一人で入場口まで来た。

券はあるのに子供一人じゃダメだって。

それでも諦めきれなくてウロウロしていた。



「君、パパとママを待ってるの?」



見ると、キャラクターのうさぎだった。



「パパとママ、うそつきなんだもん……。

約束したのにさ……」



券を見せると、うさぎが特別に入れてあげる、と言って裏口に案内してくれた……!



「この特別券はアトラクションを待たずに乗れるし、園内のお店を制限なく使えるのよ」

「本当に!?」



うさぎと手をつないで、目当てのアトラクションに行くと、並んでいるお客を差し置いてすぐに乗せてくれた。

うわあ、本当に特別なんだ!!

お陰でいつもは乗れないアトラクションに全部乗れた。

レストランでは好きな物を頼みたい放題。

欲しかったグッズも好きなだけ買えた。



「持ちきれないから、友達のパンダくんに手伝ってもらいましょう」



パンダが来て、荷物を全部持ってくれた。

うさぎとパンダの手を握って思った。

今日は本当に夢みたいな最高の一日だ!



「帰りたくないなあ。二人がパパとママだったらいいのに!」

「だったら、僕たち子供になるかい?」

「そんなことできるの?」

「この券を持っている子は特別だからね。誰でもなれるわけじゃないよ」

「じゃあ、僕のうさぎとパンダの子供になりたい!」

「じゃあ、行こう」



導かれるままについて行くと、そこは、ぬいぐるみの保管倉庫だった。



「さあ、君はどれになる?」

「どれになるって?」

「僕たちの子供なら、うさぎやパンダ、くまやぞうにならなきゃいけないよ」

「なれるわけないよ。僕人間だもん」

「いいや、君はぬいぐるみになるんだよ。

大丈夫。大きくなったらまた、今の僕たちみたいに遊園地の中を自由に動けるようになるから」

「そのかわり大きくなる前に人間に買われてしまったら、一生ぬいぐるみのままなのよ」



え、なに言ってるの……?

まるで逃がさないみたいに、うさぎとパンダがギュッと強く僕の手を握った。



「さあ、なんのぬいぐるみになる?」




                                                 
  
        
< 6 / 25 >

この作品をシェア

pagetop