身代わり同士、昼夜の政略結婚
「私は、あなたと私のお披露目は、あなたにもう少し我が国に慣れていただいてから、折を見てお願いしたいと思っております」

「まあ。すぐにでも婚姻するものと思っておりましたわ」

「ええ、もちろん、両国の関係を円滑にするためにも、できる限り早く婚姻したいですよ」


……ただ。


「不躾なお願いですが、できることなら、挙式の際にベールを外していただきたいのです」


不意打ちすぎて、思わず言葉に詰まる。


アマリリオ王国では痛いほどだったけれど、オルトロス王国は、わたくしにとって薄暗い。


この青い目でも眩しすぎないので、目を覆う必要がない。それなのにベールをかぶっている。一般常識に照らせば、不躾なのはこちらである。


「どうか、ベールを外してくださいませんか。それでは私の顔が見えないでしょう」

「わたくしは今まで、どなたの顔も見えませんでした。見えなくても構いませんわ」


「私があなたを見たいのです」


ごく穏やかだった。

穏やかなままにこりと微笑んだ気配がして、それが穏やかながら譲らない意思を強くはらんでいて、口をつぐむ。


「布越しでなくお話したいのです。……いけませんか」
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