身代わり同士、昼夜の政略結婚
意外としりとりも面白いわね。慣れ親しんだ語彙から選ぶわけだから、分からない言葉が出てきたら、意味を聞いて、文化を知るのに向いているんだわ。


楽しく学ぶのにいいわね、と散らばる思考を置いて、ひとつ深呼吸をし、前を見る。


わたくしは、アステルに笑ってほしい。穏やかであってほしい。隣に、いてほしい。


「アステル。あなたはきっと、道導になる星です」


オルトロス王国の人々は、あなたのお兄さまに導かれるでしょう。


「でもわたくしは、暗闇の向こう、手探りをしながらわたくしの視界を照らすのは、あなたであってほしいわ」

「ええ。きっと、そうありましょう。私はあなたの手をとって、隣を歩きます」


金の目が、こちらを射抜く。


アマリリオ王国の民が焦がれる太陽の色。木材から作った蝋燭のように白い肌、オルトロス王国の空の色をした髪。


うつくしい人に、するりと手を取られた。


「……やはり、あなたはあたたかいな。太陽の国の人、ひなたの人なのですね」

「あたたかい、のですよね? 熱くはないのでしょう? あなたを焦がしてはいけませんわ」


しみじみ言うものだから、心配になる。


心配いりません、と笑ったアステルは、体温はもちろんあたたかいですが、と前置いた。


「今のは、あなたが明るくて太陽みたいだということを言いたかったのです」


私はあまり詳しくはありませんが、きっと、ひなたとはこういうものなのだろうと思いました。


「私の婚約者が、ミエーレ、あなたでよかったと、言いたかったのです」

「わたくしもです。わたくしの婚約者に立候補してくださったのが、あなたでよかったわ」


寿ぎの鐘が鳴る。婚姻を結ぼう。式を挙げよう。いまこそ確固となった同盟に、盛大な祝福を。
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