初な彼女と絆される僕
溢れる欲望〜勇剛 side〜
僕は“欲”を持ったことがない。 

いや…本当は、欲を持っている。
でも欲を“認識したことがない”


一人っ子の僕は、生まれた時から何でも与えられて育ち、僕はいつも“羨望の的”だった。

カッコ良くて、何でも持ってて、頭も良くて、優しい。

そう言われ、男女問わず人気だった。
初恋ってモノもなくて、中一の時に高校生の女の子に告白されて“なんとなく興味があり”付き合った。

すぐに別れたけど…
“クールで何考えるかわかんない”と言われ、フラれた。

中二の夏には、今度は大学生の女の子に告白されて付き合って、初めてセックスした。
(いや、襲われたって表現が正しいかも?)
でも、色々教えてもらった。 
その彼女にも早々にフラれたけど、身体の相性は良いとかで、しばらくセックスフレンドとして付き合った。

それからもズルズルと、流れに任せて生きていく日々。
でも、楽だった。
何も考えずに済むから。

そんな中、辛かったのは――――両親の全ての期待を一心に背負わされたこと。

“欲しい”と思う前に全てを与えられ、したくもないのことを強制される。

“欲”に無縁で生きてきた。

守原ホールディングスに就職したのも、実は親に言われたからだ。
ただ、この会社は頑張れば頑張るだけ結果がついてくる。
やりがいを感じられた。

だからこの年で早々に課長職を任されるようになったのだ。



初めて“欲”を感じたのは、李依に出逢った三ヶ月前だ。
新入社員として入社してきた、李依。

その時、大学生の時に見かけた“あの娘”を思い出した。

一気に“欲”が湧いた。

欲しい―――――――と。

でも、どうやって手に入れればいいのかわからない。

今まで付き合ってきたどの相手も“自分から”誘ったことは一度もない。
来るもの拒まず、去るもの負わずで付き合ってきただけだ。

僕は、考えた。

よし!まずは、信頼関係を築くことが先決だ。
時間がかかっても、少しずつ仲良くなって、それから想いを伝えよう――――――と。



そして―――――
今腕の中に、李依がいる。

これ以上ない、幸せだ。

僕が頭を撫でると、気持ちよさそうに微笑んだ李依。 

あぁ…可愛い。

「好きだよ、李依」
思わず、声に出た。

すると、更に嬉しそうに笑って「フフ…私の方が好きですよ!」って言った。

いやいや…
想いの強さは、きっと僕の方がはるかに大きいよ。

だって、既に…

「このまま……離したくない…」

僕の腕の中に閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくない。


どうしてくれるの?李依。
ほんっと、日に日に“欲”が膨らんでいくじゃないか。


責任取ってね、李依――――――

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