初な彼女と絆される僕
裏切りの過去
勇剛には、知られなくない過去がある。


高校生の時に付き合っていた、彼女。
まさに才色兼備で、勇剛とは美男美女カップルだった。
誰からも、羨望の目を向けられる日々。

勇剛も、彼女といると居心地が良かった。


でも彼女は“計算高い女”だった―――――



常に、他人にどう思われるかを計算して行動を起こす。
勇剛との交際も“自分をよく見せるため”だった。

“外見だけの女”だったのだ。


彼女と別れた原因は、彼女の“妊娠”だ。

勇剛はセックスをする時、どんなに酔っていたとしても避妊は“必ず”していた。

自分が不利になることは、決してしない。

しかし彼女も、計算高い女。

上手く勇剛を誘導し、妊娠することに成功したのだ。

結果的にそれが原因で別れたのだが、勇剛にとって思い出したくない過去になったのだ。



「――……じゃあ勇剛さん、お先に失礼しますね」
「うん、気をつけて帰るんだよ?
帰りついたら、連絡して?心配だから」

「はい」
「…………ん?寂しい?」

「はい、寂しいです…」
「フフ…ほんと、素直で可愛い!」

立ち上がった勇剛が、李依を抱き締める。
李依もしがみついた。

「明日は、デートしようね!」
「はい!」

微笑み合って、李依は小さく手を振り会社を出た。


会社を出て、駅に向かおうとしていると、小学生くらいの女の子を連れた女性が会社を見上げていた。

「……………あの、どうされました?」
なんとなく気になり、声をかけた李依。

「あ、山西さん、ここで働いてますよね?」

「え?勇剛さん?」

「“勇剛”?
あ、貴女、彼の恋人?」

「え?はい」

「へぇー、ちょっと意外…」
そう呟いて、李依を舐めるように見つめる。
そして意味深に笑い、李依に言った。


「勇剛に伝えてください。
養育費、払ってって!」


「…………………
………え…」


李依は、女性と女の子を見て固まっていた。
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