初な彼女と絆される僕
【ゆうごうさん、大切な話があります。
何時になっても構いません。
会って話したいので、連絡ください】 

李依らしくない、淡々としたメッセージ。

この文章だけで恐ろしさがにじみ出ている。


勇剛が仕事終わりに連絡すると、会社前で李依が待っていた。

「李…依…?」

切なく、苦しそうな表情(かお)
勇剛に、緊張が走る。

「勇剛さん、近くの公園に行きませんか?」

「………うん」


ベンチに並んで座る。

「李依、どうしたの?」
顔を覗き込み、問いかける。

「勇剛さん、私の質問に“正直に”答えてください」
真っ直ぐ向き直り、真剣な表情で言う。

「う、うん」

「勇剛さん、糸岩(いといわ) 春美(はるみ)さんを知ってますか?」

「え……」

「正直に答えてください」

「………知ってるよ」

「高校三年生の時、糸岩さんとお付き合いしてたのも本当ですか?」

「………うん、そうだよ」

「その時………糸岩さん、が…に、妊娠…したことは?」

「うん。知ってる」

「さっき、会社前に糸岩さんが来てました。
娘さんを連れて」

「は?」

「養育費を貰いに来たって言ってました」  
 
「養育費?
なんで、僕が……」

「勇剛さん、私は“何があっても”勇剛さんの傍にいたいと思ってました。
…………でも……今回のは、ダメですよ……」

「え……李依……」

「勇剛さん」

「李依!」
(やめてくれ!!違うんだ……!!!)
 


「私と、別れてください………!」

やけに響く、李依の言葉。


「…………………は?
冗談…やめてくれ……」

「冗談じゃありません!
勇剛さんはお父さんなんですよ!?」

「違う!!
その子は、僕の子じゃない!!!」

「は?
…………勇剛さん…私のこと、バカにしてるんですか?」

「李依!聞いてくれ!
本当なんだ……!!!」
李依の肩を持ち、訴えるように言う。

「糸岩さんとは、エッチしてないんですか?」

「シてたよ?
シてたけど!!」

「だったら……
勇剛さんの子じゃないですか!?」

「そうじゃなくて!!!」

「勇剛さんが、そんな無責任な人とは思っていませんでした」

「い、よ…り……」

軽蔑するような李依の視線。 
勇剛は、たじろいだ。


李依は「今の勇剛さんのこと、信じられません」と言って、去っていった。
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