初な彼女と絆される僕
「――――フフ…良かったね!」 

その日の夜、裕弓に電話をして嬉しそうに報告した李依。
電話口で、裕弓の声も弾んでいた。

「ねぇ、ヒロちゃん。
どうすればいいかな?」

「ん?何が?」

「ほら私、初めてのことだし」

「とりあえず、自分の気持ちに正直になることね!
どんなに好き合ってても、所詮は他人なんだからわかり合うには想いを伝えあわないと。
私はそれで一度、失敗したから」

「あ…そうだよね…」

「あとは、甘えとワガママの線引をきちんとすること。
あとは……
……………って、ごめん(笑)
李依と彼がどうかはわかんないもんね!」

「ううん!ありがとう!
ヒロちゃんがいてくれるから、心強いよ!」


通話を切り、風呂に入った李依。
寝る前に、スマホを握りしめていた。

「良いよって言ってくれたけど、本当に迷惑じゃないかな?
…………でも、電話もメッセージも苦手って言ってたしなぁ…
課長は優しい人だもんなぁ。
私のことを思って“良いよ”って言ってくれたかもだし……」

結局李依は、出来ずに眠りについた。


一方の勇剛。
ベランダで煙草を吸いながら、スマホの画面を見つめていた。

真っ黒な画面を見つめながら、煙草の煙を吐く。

“おやすみなさいってメッセージ、送ってもいいですか?”

「送ってきてくんないのかな?
それとも、まだ寝る時間じゃない?とか?」

勇剛はおもいきって、李依にメッセージを送った。
【李依、起きてる?】

しかし、なかなか“既読”にならない。

「やっぱ、寝てるか…」

それとも、僕が“苦手”って言ったから…?

そんなつもりで言ったんじゃない。
ただ今までの恋人達は、マメな人が多く、ことある毎にメッセージや電話をよこしてきた。

それ自体は構わない。

勇剛が嫌なのは、それを“勇剛にも”強要してくること。

勇剛は連絡をし合うより、会いに行く方がいいと思っている。
声を一時間聞くより、五分会って顔を見る方が良い。

そのためなら、寝る間を削ってでも会いに行く。

メッセージを送ると言われると、やはり期待してしまう。

「………」
(ヤバい、会いたくなってきた)

でも、寝てる李依を起こすわけにはいかない。
勇剛は、モヤモヤを抱えたまま眠りについた。
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