こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

-3-


 新年を迎えても、特に何が変わるというわけでもない。

 秒針がひとつ動いて12をまたいだというだけであって、動いている時間に変化が起こるはずもないのだから。

 新年を迎えるたび、毎年のように俺はこんな風に思っていた。


 けれど今年の年明けは何かが違っていた。

 小川さんの部屋を出て、街を歩き、電車に乗り、自分のアパートへ戻る。

 行動は何も変わらないのに、その間に味わう空気には確かにくっきりとした清清しさが滲んでいる。

 妙に澄み切った感じのする街の中を歩きながら俺は、ぼんやりとこれからのことを考えていた。


 仕事のこと、圭吾のこと、奈巳のこと、オヤジさんのこと。

 田中やコミヤ、図書館の斉藤さんのことも思い浮かべながら。


 最後にたどり着いたのはやはり小川さんのことで、

 これからこの関係をどう続けていけばよいのか、明るく街を照らす朝日に目を細めた。




< 191 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop