清くて正しい社内恋愛のすすめ
「気になるんでしょ? いいよ、先にホテルに帰って仕事してて」

「でも、お前を一人にさせる」

「何言ってるの。大丈夫だよ。みんなのお土産は私が見つけとくから、任せて!」

 穂乃莉は自分の胸をドーンと叩く。


「……ごめんな」

 しばらくして加賀見は眉を下げながら声を出すと、穂乃莉の頬にそっと触れた。

 加賀見に触れられた部分が、どんどん熱くなる。


「頑張ってね」

「あぁ。支配人との約束には必ず行くから、ホテルのロビーに集合でいいか?」

「うん。大丈夫」

「じゃあ、気をつけろよ」

「ありがとう」

 加賀見は穂乃莉の頬からそっと手を離すと、足早に店を後にした。


 穂乃莉だって本心を言えば、普段の生活から離れて、加賀見と二人きりで過ごすこの時間は貴重だった。

 でもこればかりは仕方がない。

 穂乃莉は、さっきまで加賀見に触れられていた頬に手を当てると、気持ちを切り替えるように息をふっと吐いた。


 加賀見と手を繋いでいた場所に、一人で立っているだけで無性に心もとなくなってくる。


 ――こんなにも私の中で、加賀見の存在が大きくなってる……。


 いつの間にか、加賀見の隣を歩くことが当たり前になってしまった。

 穂乃莉はぼんやりと、そんな事を考えながら買い物を済ませ店を後にした。
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