清くて正しい社内恋愛のすすめ

黒い思惑

 ――加賀見が戻ってくる前に、少しでも話をすすめないと……。


 相変わらず自分の話をする支配人を見ながら、穂乃莉の中に少しずつ焦りが見え始める。

 食事はすでにデザートを終え、テーブルの上のコーヒーカップには食後のコーヒーが注がれていた。

 支配人が一旦カップに口をつけ、話が途切れた瞬間を狙って穂乃莉は口を開いた。


「原田様。今日は本当に貴重なお話を伺えて光栄です。よろしければ最後に私から、そちらのプランの説明を、少しさせていただけませんでしょうか」

 穂乃莉が企画書に手を向けると、支配人はチラッとそちらに目をやり、「そうですな」と納得したような声を出した。


 穂乃莉はほっとすると、支配人がめくった最初のページから順に手短に説明をしていく。

 加賀見が吉村に説明していた内容を思い出し、できるだけ端的にポイントを絞って話をするようにした。

 順調に説明が進みだしたその時、支配人が「ちょっと失礼」と片手を上げ、自分のスマートフォンを取り出す。
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