清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あ、いや。ごめん。ちょっとメールがね……完全に、バグってるね」

 穂乃莉はもごもごと口を動かすと、再び画面を覗き込んで文字を打つ。


『私はオーケーしたつもりはないから!』

『契約は成立しただろ?』

『どう捉えたら契約成立になるわけ!?』

『お前キスしたとき、拒否も否定もしなかったじゃん』


 ――それは加賀見が強引にキスしたから……。


 そうキーボードを打とうとして、穂乃莉は手を止める。

 確かに加賀見のキスは強引だった。

 それでも嫌な気なんてしなかったし、むしろ「このまま流されてもいいかも……」なんて思いが、ふと頭をよぎったのは事実。

 穂乃莉は寒空の下、ひどく熱を帯びた自分の身体を思い出して、ドキッとする。


『とにかく! 一度話させて』

 穂乃莉は手早くキーボードの上で手を動かすと、チラッと加賀見の顔を見る。

 加賀見はにんまりと口元を引き上げた。

『考えとく♡』


 ――この、腹黒王子……。


 穂乃莉はディスプレイに向かって、ありったけの渋い顔を見せると、チャットルームをブチっと切った。
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