清くて正しい社内恋愛のすすめ
 きっと今回の東雲からの謝罪で、やっと解放された気がしたのは、穂乃莉だけでなく相田も同じだったのではないかと思う。


「企画のこと、本当に良かったな」

 しばらくして、加賀見がそう言いながら、穂乃莉の手をそっと握る。


 加賀見がどんな反応をするだろうかと、思い描きながら話をした穂乃莉だったが、まさかみんながいるフロアで抱きしめられるとは思ってもみなかった。


 ――すごく恥ずかしかった……けど、すごく嬉しかった。


 穂乃莉はまた頬を赤くすると、照れたような顔をする。


「どうかしたか?」

 加賀見が不思議そうに顔を覗き込ませ、穂乃莉は慌てて首を振った。

「ううん。加賀見が一緒に頑張ってくれたから、この結果になったんだよ。本当にありがとうね」

 穂乃莉は握られた手をギュッと握り返すと、加賀見に笑顔を向けた。

「穂乃莉の努力の結果だろ? でも、そういうことにしとくか」

 加賀見が笑いながら言い、穂乃莉もくすくすと肩を揺らして笑った。


 あの出張以降、加賀見は可能な限り、穂乃莉をマンションの前まで送ってくれるようになった。
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