清くて正しい社内恋愛のすすめ

デートの行方

 加賀見とのデートを週末に控えた夕方、穂乃莉は取引先からの外出を終えて、会社へと戻る歩道を歩いていた。

 加賀見に自分の気持ちを伝えようと決めてからは、仕事をしていても頭の中はついそのことでいっぱいになってしまう。


 会社のエントランスを通り抜け、エレベーターのボタンを押す時に、かすかに指先が震えているのに気がつき、思わず苦笑いした。

 純粋にデートが楽しみだというワクワクした気持ちと、自分は加賀見に気持ちを告白するのだというドキドキとした緊張感。

 そして時に不安にさいなまれ、心臓がぎゅっと掴まれたように苦しくなる感覚。


 穂乃莉の中でいろんな感情が入り乱れ、それでも加賀見と向き合うと決めたのだから“逃げてはいけない”という考えに最終的にはたどり着く。


 ――たとえ、結果がどうであったとしても……。


 深く息を吐いてからフロアの扉を開けた穂乃莉は、国内チームのデスクを見て小さく首を傾げた。

 座っているのは電話中の花音だけだ。

 他のみんなはどうしたのだろう?
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