清くて正しい社内恋愛のすすめ

突然の誘い

 穂乃莉はリビングの背もたれに寄りかかると、ぼんやりと窓の外を眺める。

 太陽はもうとっくに一番高いところを通り過ぎていた。

 ふと、何も予定のない週末はこんなにも退屈だっただろうかと考えて、穂乃莉は小さく首を振った。


 ――違う。急に、予定がなくなっちゃったからだなぁ……。


 ぽっかりと空いた週末だからこそ、こんなにも所在なげに過ごしてしまうんだろう。


 穂乃莉はソファに置いていたスマートフォンを手に取ると、メッセージアプリを開いた。

 加賀見からは「これから出勤」というメッセージが午前中に届いたきりだ。

 差し入れでもしに行こうかとも思ったが、必死に対応している所に水を差すようでやめておいた。


 穂乃莉はぐっと両手を上に伸ばすと、そのままソファに置いたクッションにバタンと倒れ込む。

 その拍子に床に落ちたスマートフォンが、急に着信音を鳴らし、ドキッとすると慌てて飛び起きた。


 スマートフォンを取り上げた穂乃莉は、画面を覗き込んで小さく首を傾げる。

「おばあさま?」
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