清くて正しい社内恋愛のすすめ
 ――まさか……裏で何か動いている……?


 東雲の視線が揺れた時、突然大きな音をたてて会議室の扉が開かれた。


「社長! 大変です……」

 駆け込んで来たのは、今回の開発を担当する経営企画室の社員数名だ。

 その内の一人のタブレットを持つ手が震えている。


「今、社長への報告の途中だぞ」

 同じ経営企画室の室長が厳しくたしなめたが、東雲はそれを片手を上げて制止すると、こわばった顔をしている社員に目を向けた。

 「何か至急の用件でも?」

 首を傾げる東雲に、社員はタブレットの映像を掲げる。

 そこに映っているのは、どうも昼のワイドショー番組のようだ。


「今放送中の番組です。すぐにこれを社長に……」

 近くにいた社員がタブレットを受け取り、目の前のスクリーンに繋ぐ。

 すると急に、場違いなほど明るいリポーターの声が、会議室内に響き渡り出した。


『皆さんこんにちは。私は今、SNSなどで話題沸騰中の“星空プロムナードツアー”を開催している、旅館久留島本店に来ています! 見てください、この堂々たる佇まい。さすが久留島本店、素敵ですよね。それではさっそく中へ入ってみましょう』
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