清くて正しい社内恋愛のすすめ

三ヶ月の終わり

「皆さーん、グラスの用意は良いですかぁ?」

 玲子の威勢のいい声が店内に響き渡り、集まった面々は一斉に顔を上げる。

 あれからあっという間に日が過ぎ、今日は三月の最終出勤日。

 穂乃莉はついにトラベルでの勤務を終えたのだ。


「それでは、我らが穂乃莉ちゃんの門出を祝って! カンパーイ!」

 玲子の号令で一斉にみんながグラスを鳴らした。

 穂乃莉はみんなに囲まれながら、それぞれとグラスを合わせていく。


 今夜の穂乃莉の送別会は、社長を含め他部署の社員も多数が集まってくれた。

 星空ツアーの企画で、部署をこえて社内全体が一致団結して業務にあたったこともあり、みんなが穂乃莉の退職を嘆き、また新たな出発を応援しに来てくれたのだ。


「穂乃莉さーん……私、嫌ですぅ。やっぱり嫌ですよぉ」

 花音が今日一日中繰り返した言葉を、やはりここでも口にしながら穂乃莉の腕に縋りついた。

「もう、花音ちゃんったら! これからは花音ちゃんも中堅になるんだから。ほら、笑顔笑顔!」

 穂乃莉は花音の手を握ると明るく声を出す。
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