清くて正しい社内恋愛のすすめ
「陵介のキスは、やっぱり魔法だって思ってた」

 穂乃莉の声に、加賀見が今日何度目かのにんまりとした顔を見せた。

「じゃあこれからは、毎日その魔法を穂乃莉にかけられるってことだな」

「はい、覚悟しておきます」 

 穂乃莉はくすくす笑いながら、おどけたような声を出す。


「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけど」

 しばらくして、穂乃莉は加賀見の顔を上目づかいに見上げた。

「ん?」

「入社した時から、私にゾッコンだったって話……本当?」

 下から見上げる加賀見の頬が、ほんのりピンクに色づいていくのが見える。

「どうだったかなぁ?」

 加賀見はわざとらしく目線を上に向けると、(とぼ)けたような声を出した。

「もう! 肝心なことは、言ってくれないんだから」

 穂乃莉が頬を膨らませると、加賀見はあははと笑い声をあげる。

 そして優しい瞳で、穂乃莉をまっすぐに見つめた。


「いつから穂乃莉に惹かれてたのかは、自分でもわからない。でも、穂乃莉のことは入社の時からずっと見てたよ」

「え……」

「お嬢様なんだから適当に仕事すればいいのに、自分のことは後回しにして、何でも一生懸命に突っ走るからさ。危なっかしくて、ひやひやしながら見てるうちに、気がついたら抜け出せない程に、穂乃莉に惹かれてた」

「……陵介」
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