清くて正しい社内恋愛のすすめ

番外編:約束のデート ※本編のP.403とP.404の間のお話です

 春の日差しが降りそそぐ中、穂乃莉は駅に到着すると、軽く辺りを見回す。

 すると駅前広場の花壇の近くで、スマートフォンに目線を落としている加賀見の姿を見つけた。

 穂乃莉は加賀見の姿を見つけると、スカートの裾を揺らしながら小走りで駆け寄る。


 三月最後の週末の今日、二人はずっとお預けになっていたプラネタリウムへ行くことした。

 もう来週には穂乃莉はトラベルを退職して、すぐ本店へ引っ越しになる予定だ。

 “最後のチャンスだから”と二人は無理やり予定を調整したのだ。


「加賀見、お待たせ」

 穂乃莉が声をかけると、加賀見はゆっくりと顔を上げ、途端に少し驚いたように目を開く。

「なんかいつもと、雰囲気が違うな」

 加賀見はまじまじと穂乃莉の姿を見ている。

「そ、そうかな……」

 穂乃莉は少し照れたように髪を耳にかけると、「デートだから……」と小さく声を出した。

 いつもパンツスーツ姿の穂乃莉は、今日は少し気合いを入れておしゃれをしてきた。
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