清くて正しい社内恋愛のすすめ

それぞれの感情

 穂乃莉はデスクのパソコンに向き直ると、必死にキーボードを叩いていく。

 加賀見との打ち合わせが終わってから、話を聞きたいオーラを全身で放つ花音を振り切り、穂乃莉はパソコンに向かっていた。


 三度目のキスの後、「じゃあ本題」と言って加賀見が差し出したのは、ほぼ完成形のツアー企画書だった。

 タイトルには“東雲リゾートホテル パッケージツアーご提案書”と書かれている。


「もしかして、お休み中に作ってくれてたの……?」

 驚いて目を丸くする穂乃莉に、加賀見はそっと眉を持ち上げた。

「企画書のひな型だけだよ。あとはお前のプランを盛り込む感じかな?」

「そんな、ほとんど完成形じゃない。すごい」

 穂乃莉は手渡された企画書を、一枚一枚じっくりと目を通していく。


 加賀見が作った企画書は、ツアーのポイントや“東雲”に対するメリットがわかりやすくまとめられており、そのクオリティの高さが伺える。

 今まで加賀見が営業成績トップに立っていたことを、改めて納得させるものだった。
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