添い寝だけのはずでしたが

side葵

 とうとうやってしまった……。


 寧々のことを愛しいと思うが余り、確認もせずに暴走しかけた。


 案の定、警戒させてしまった……。


 驚いた顔をしていたし、やっと縮まったはずの距離が一気に遠のいた気がする。


真面目な寧々にあんなやり方は通用しないのに……学祭の準備に興味を持たせるために色々な話をしているのは分かっていたが、その内容なんて右から左。


熱心に話す寧々がかわいすぎて……つい、早まった。


 最近は寧々のお陰で少しは眠れるようにはなっていたものの、さすがに昨日はほとんど眠れなかった。


朝方目が覚めたのをきっかけに、そのまま起きている。


学校へ行く支度をすませ、部屋に戻るとちょうど寧々が起きたところだった。


「今、起きたんだな……」


 声をかけると目も合わせずに一礼し、そのまま部屋を出て行った。


 これは……まずい。


 昨日のことをかなり怒ってるよな。


 不用意にキスをしかけたことを……深く反省。


 好きでもない俺にあんなことをされて、怒るのも当然。


 ましてやここにいることを義務だと思っている寧々に、あれ以上の苦痛はないはず。


 居づらくなって、出て行くかもしれない。


 それは困る……。


 寧々のいない生活にもう耐えられない俺はどうすればいい?


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