添い寝だけのはずでしたが
何も言い返せないでいると、


「まあまだ時間はあるし、とりあえずここに座れよ」


と言ったあと、手元のスマートウォッチの時間を確認するように軽く触れる。


そしてフッと鼻で笑った。


「あーあ、気が利かないメイドだな。一緒に食おうと思って呼んだのに」


 そうなの?


 実は、今のところひとりでお弁当を食べている。


 最初は葵さまと一緒に食べていたんだけど、友達もたくさんいるみたいだし何だか申し訳なくて。


 エマちゃんは何度か話しかけてくれたけど、葵さまから接触することを禁止されているし、避けているうちに話しかけられなくなった。


そして他の女子も、自然と私から距離を置くように。
せっかく初日から親切にしてくれたエマちゃんには申し訳ない気分でいっぱい。


それはそうだよね……歩み寄ってくれるのに、こっちから拒絶してるんだもん。


まるで、私に対する葵さまと同じだよ。


まあ私の方は仕事だから距離を置くわけにもいかなくて、振り回されっぱなしだけどね。


目の前にサンドイッチをいくつか並べて、好きなのを食べていいと言われるけどお弁当があるから取りに行こう。


一緒に食べるつもりなら、最初からそう言ってくれればいいのに。


 素直じゃないというか、意地悪というかなんというか。


立ち上がろうとしたら、両手で肩を押さえ付けられた。


「いいから座ってろ。少しでも早く会いたかった」


 愛おしそうに見つめられて、ドキドキしてくる。


 葵さま……どうしちゃったの? 


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