私が社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
6.毒女
 ユージーンがクラリスと結婚をして二年が経った。新しい家族も増え、悦びに満ちているユージーンではあるが、今日もクラリスの姿が見えない。
 ここに来てからの彼女は、ありとあらゆる毒生物を捕まえては、毒を抽出し、毒薬を作る日々。だが、最近では別のものも作っているようだ。
「あ、ぶっ……」
 腕の中には赤ん坊がいる我が子はかわいい。見ていて飽きない。
 クラリスは、自身がそうであったように、子どもも定期的に毒の摂取が必要になるかもしれないと怯えていた。だから彼女は、子を望もうとはしなかった。
 それを説き伏せたのもユージーンである。
 クラリスが毒を飲むのは、ユージーンが酒を飲むのと同じようなものだと一笑したのがきっかけだった。それに彼女も納得したのだから、例えがよかったのだろう。
 今のところ、この子に毒の定期摂取は必要なさそうだ。ミルクもよく飲み、よく寝る。
「クラリス、こんなところにいたのか」
 彼女の姿が見えないときは、毒草園か調薬用の小屋をのぞけばよい。今日も何やら、薬を作っていた。
 このような辺境の地では、アルバートやハリエッタを毒から守れないと嘆いていたクラリスであるが、彼らが毒に侵されたとしても、解毒薬を準備しておけばいいということに気づいたようだ。
 それを王都にいるジェフリーに相談したところ、解毒薬はいくらあっても困らないとのこと。だから、毒薬の他にも解毒薬を作るようになった。
 彼女の作る解毒薬は、ウォルター領でも重宝されているし、魔獣討伐にいく騎士たちにとっても必要なもの。
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