私が社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「今日は、何を作っているんだ? そうやって、あまり根を詰めるでない」
「ジェフリーから頼まれたのです。最近、アルバート殿下に媚薬を盛る方が多いようで。まだあのお二人にはお子様がいらっしゃいませんから」
 アルバートとハリエッタは、一年以上の婚約期間を経て、半年前に結婚したばかり。
 ユージーンも結婚式に招待されたが、すでにクラリスのお腹は大きくなっていて、お祝いの言葉と品を贈るだけにとどめた。
 ユージーンだけでも出席すればよかったのにとクラリスは口にしたが、身重の彼女を一人にしたくないというのが、彼の気持ちでもあった。
 そんなユージーンはなんだかんだでアルバートに感謝している。
「媚薬が盛られるのがアルバートなのに、なぜジェフリーから解毒薬を頼まれるんだ?」
「わたくしが作っているのは、解毒薬ではございません。特定の異性にしか発情しない薬です」
「すまない。話が飛躍し過ぎて、俺には理解できない」
 毒薬や解毒薬にもいろいろな種類や対処法があるようで、ユージーンには理解できないことも多い。
「ジェフリーが両殿下の毒見役なわけですが。まぁ、最近はなぜか媚薬が多いわけです。そこにどんな陰謀が隠れているのか、わたくしにはわからないところではありますが。ジェフリーは取り込んだ毒薬を無効化する力はございません。少々、効きが悪い程度です。ですから大量に摂取すると……まぁ、そういうことです」
 ちょっとだけジェフリーに同情を覚えた。
「ですが、アルバート殿下が特定の人物にだけ発情する薬を摂取していれば、仮に媚薬が仕込まれたとしても、不特定多数の人物と情事に至らずに済むというのが、ジェフリーの考えのようです」
「ああ、なんとなく理解はできた。だが、その薬ができあがったとして、どうやって効果を確かめるのだ?」
 クラリスに薬は効かない。
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