優しい彼の裏の顔は、、、。
 一方、出掛けて行った郁斗はというと、車を走らせて繁華街へと向かっていた。

 その途中で彼のスマホの着信音が鳴り響き、ワイヤレスイヤホンを付けていた郁斗はそのまま運転しながら電話に出た。

美澄(みすみ)か、どーした?」
「郁斗さん、アイツ、逃げました!」
「逃げた?」
「はい、小竹(こたけ)と二人で見張ってたんすけど……隙をつかれて……」

 美澄と呼ばれた電話の相手の男は郁斗の部下なのか、話し方から終始彼の顔色を窺っているように思える。

 そんな美澄の話を聞いた郁斗の表情は一気に陰り、わざとらしい深い溜め息を吐くと、

「はあ…………美澄よぉ、テメェはそれで良いと思ってんのか? ああ? 逃げたじゃねぇんだよ! 逃げられたんならどんな手使ってでも血眼になって探し出せ! いいか? 見つけ出すまで戻ってくんじゃねぇぞ?」

 額に青筋が浮き出そうな程の怒りを露にした郁斗は、電話越しで美澄を怒鳴り散らした。

 恐らく、その場に相対していれば美澄という男は殴り倒されていただろう。

「す、すいません! 必ず見つけ出して連れ帰ります!!」

 郁斗の剣幕に恐れをなした美澄は早々に電話を切るも、彼の怒りは収まらない。

「クソがっ! たかが集金も満足に出来ねぇのかよ」

 ブツブツと文句を口にしながら急遽行き先を変更した郁斗は一気にスピードを上げて車をどこかへ走らせて行った。
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