ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす
自分の身は自分で守れ!王太子
その日は夏の終わりの荒れた天気の日だった。

朝から滝のような雨が降り続き、日差しはなく辺り一面は薄暗いままだ。

「外の景色も何も見えないわね。あ、雷!」

窓の外を見ていたクリスティーナが稲妻に声を上げた刹那、ドーン!と凄まじい音が響く。

「キャー!」

ロザリーは顔を伏せて身体を震わせた。

「大丈夫よ、ロザリー」

クリスティーナはロザリーをソファに座らせると、優しく背中をさする。

「も、申し訳ありません。お手を煩わせてしまって…」
「いいのよ。こんなに激しい雷鳴ですもの。怯えて当然だわ」
「ですが、アンジェ様はちっとも動揺なさらないのですね?」
「そうねえ。雷よりももっと怖いものがあるから」

え?と首を傾げるロザリーに笑ってごまかし、クリスティーナは心の中で案ずる。

(これだけ視界が悪いと見張りも役に立たない。それにこの雷雨。忍び込む物音や足跡さえ消してくれる。もし私が敵なら忍び込むのは今だわ)

王太子は隣の執務室にいるが、一人にしない方がいい。

そう思い、クリスティーナは立ち上がる。

「ロザリー。わたくし少し王太子様とお話があるの。あなたは侍女達のお部屋にいてくれる?」
「え?はい。かしこまりました。何かあればすぐに参りますので」
「ありがとう」
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