レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~

1 父王からの非情なる命令


 レメユニール王国第一王女・ノツィーリアは、広大な玉座の間で父王と対面するなり耳を疑うような言葉をかけられた。

「ノツィーリア。貴様を一晩【五百万エルオン】で貸し出すことにした。来月から毎晩客人をもてなすように」

 返事を言いよどめば、贅を尽くした玉座の間に静寂が訪れる。父である国王から告げられた命令をノツィーリアは即座に理解できなかった。五百万エルオンといえば中流貴族の平均月収に相当する金額である。

(私を五百万で()()()()、とおっしゃったの……!?)

 ノツィーリアが戸惑っていると、父王が飽食で肥えた体を重たげに動かして、派手な金の装飾の施された椅子の上でのっそりと膝を持ち上げて足を組んだ。
 苛立ちの視線に貫かれて、とっさに顔を伏せてしまう。
 いつもならその目付きのあとに浴びせかけられる怒声の幻聴に怯えつつ、ノツィーリアは再び正面に向きなおると、おずおずと問いかえした。

「貸し出す、とは一体どういう意味で……」
「わがレメユニール王国のために貴様の体で金を稼ぎだしてみせよと申しておる。成人して三年、これまでわが国になんの貢献もしてこなかった貴様に役目を与えてやるのだ。感謝せよ」
「さすが陛下、名案ですこと」
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