レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
 さも愉快そうに説明する魔導師が、くくくっ、と耳障りな笑い声をもらした。小馬鹿にした風な声を聞かされて全身に悪寒が走る。

 客とまぐわう光景が不特定多数の人間に観察されるのみならず、今まさに見せつけられたように、それぞれの人の手元で気軽に自分の顔や体の一部が大写しにされる。そのときは自分は当然裸だろう。

 ノツィーリアは両手を握りしめて恐怖と怒りを抑えこむと、父王と目も合わせず頭を下げて去ろうとした。

「待たぬか。まだ話は終わっておらぬ」

 足を止め、元の位置に戻って父王と改めて向かいあう。玉座からは視線は返ってこなかった。
 父王が魔導師に目配せする。すると魔導師は一歩踏みだすと、ノツィーリアに向かって手のひらを上にした手で指差してきた。
 意図がわからず困惑した次の瞬間、指が打ち鳴らされた。
 軽快な音が玉座の間に響きわたった瞬間、魔法の光の輪が腰回りに出現する。その輪はまたたくまにノツィーリアの体を締めつけるように収束した。

 なんの魔法をかけられたのだろう――。ノツィーリアが問いかけようとした矢先、魔導師が口の端を吊りあげた。

「避妊魔法を施しました。これでお客様は思う存分、()()()()()()()()楽しめるってわけです」
「……!」

 楽しげな魔導師の視線、そして満足げにうなずく父王の態度に心を引き裂かれたノツィーリアは、たまらずその場から逃げだした。
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