レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
いよいよ板挟みとなったノツィーリアは、床に額をつけたまま必死に考えを巡らせた。当初の予定どおりノツィーリアが皇帝を歓待するにせよ、ここまで機嫌を損ねておいてただ抱かれるだけで済むとは到底思えなかった。皇帝の気が済むまで暴力を振るわれるかも知れない。死ぬまで解放してもらえないかも知れない。
しかしそれを拒む態度を見せた結果、皇帝の怒りが王国そのものに向けられる事態は何としても避けなければならない。帝国より国力が劣っているのみならず、まったく戦争経験のない王国軍が帝国軍に立ち向かえるはずがない。
とにかくまずは妹を引き下がらせなければ――。ノツィーリアは、皇帝と妹とどちらからも虐げられる覚悟をもって、お辞儀をやめて妹に振り返った。見上げた顔は、思い通りにならない苛立ちにゆがめられていた。客人のはずの相手を、しかめっつらで睨み付けている。
ディロフルアは涙を浮かべてもいない顔を隣室に振り向かせると、金切り声で叫んだ。
「私を拒むなんて許せない! お父さまを呼んで!」
隣室に待機していたらしきメイドたちの、駆け出す足音と扉が開かれる音が聞こえてくる。
程なくして、まるで待機していたかのように父王はすぐに客室にやって来た。
ディロフルアが父親に駆け寄り、その顔を見上げて今にも泣き出しそうな声で訴えはじめる。
「お父さま! お姉さまが『ルジェレクス様のお相手は私だ』などと言って、お部屋から出ていってくださらないの! せっかくわたくしが、お務めを嫌がっているお姉さまと交代して差し上げると言っているのに!」
「また貴様は……!」
ノツィーリアを睨み付けた父王が、その顔に怒りをみなぎらせる。今までその表情のあとに怒声を浴びせられ続けてきた身は、激高したまなざしに射抜かれれば簡単にすくみ上がる。
きちんと現状を説明しなければ――。床に座ったままのノツィーリアが口を開きかけた矢先、部屋に飛び込んでくる影があった。
それは妹の婚約者、ユフィリアン・シュハイエルだった。
しかしそれを拒む態度を見せた結果、皇帝の怒りが王国そのものに向けられる事態は何としても避けなければならない。帝国より国力が劣っているのみならず、まったく戦争経験のない王国軍が帝国軍に立ち向かえるはずがない。
とにかくまずは妹を引き下がらせなければ――。ノツィーリアは、皇帝と妹とどちらからも虐げられる覚悟をもって、お辞儀をやめて妹に振り返った。見上げた顔は、思い通りにならない苛立ちにゆがめられていた。客人のはずの相手を、しかめっつらで睨み付けている。
ディロフルアは涙を浮かべてもいない顔を隣室に振り向かせると、金切り声で叫んだ。
「私を拒むなんて許せない! お父さまを呼んで!」
隣室に待機していたらしきメイドたちの、駆け出す足音と扉が開かれる音が聞こえてくる。
程なくして、まるで待機していたかのように父王はすぐに客室にやって来た。
ディロフルアが父親に駆け寄り、その顔を見上げて今にも泣き出しそうな声で訴えはじめる。
「お父さま! お姉さまが『ルジェレクス様のお相手は私だ』などと言って、お部屋から出ていってくださらないの! せっかくわたくしが、お務めを嫌がっているお姉さまと交代して差し上げると言っているのに!」
「また貴様は……!」
ノツィーリアを睨み付けた父王が、その顔に怒りをみなぎらせる。今までその表情のあとに怒声を浴びせられ続けてきた身は、激高したまなざしに射抜かれれば簡単にすくみ上がる。
きちんと現状を説明しなければ――。床に座ったままのノツィーリアが口を開きかけた矢先、部屋に飛び込んでくる影があった。
それは妹の婚約者、ユフィリアン・シュハイエルだった。