修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
「なあ。クルトとクラーラがまた来るのは3日先だけど……明日、ちょっとここに来てもいいか?」

「えっ? 明日? 明日も庭師のお仕事があるんですか?」

「ああ。それで、あんたに渡したいものがあって」

「ええ? なんでしょうか」

「それは明日のお楽しみだ。いいか?」

「はい。大丈夫です」

「わかった。じゃあ、明日も同じぐらいの時間に来る……クルト、クラーラ、起きろ。そろそろ帰るぞ」

 そう言ってロルフは双子に声をかける。2人は眠たそうに「ふわあ」と欠伸をしながらぼんやりと目覚めた。よろよろ動き、しっかりと歩けないようだ。

 それを見たレギーナは、近くの茂みに生えていた草をむしって、口の中に放り込んだ。

「?」

 ロルフは不思議そうにそれを見ていた。と、次の瞬間、レギーナの口の中からピー!と大きな音がなる。

「わあ!」

 クルトとクラーラはその音を聞いて、一瞬で覚醒をした。

「すごい! 何それ!」

「ふふふ、わたしぐらいになると、この葉っぱでもっと大きな音も出せるようになるんだから。これは葉笛と言うんですよ。この木の葉っぱは変わった形をしているので、これだけで音が出せるんです」

 そう言って、葉っぱを数枚摘んでクルトとクラーラに渡すレギーナ。

「他にも色々種類があるので、今度教えてあげますね! 口に含んで良い葉かどうか、まずはそれのお勉強からしましょう!」

 口から出すところをあまり見せるのも何かと思い、そっとエプロンで隠しながら、葉っぱを口から出して捨てるレギーナ。2人は「うわあ!」と大喜びで、元気になって歩き出す。

「ははっ、はは……!」

 ロルフは突然笑い出した。レギーナは「え?」と驚く。

「ああ、いや、凄いな。レギーナは。また色んな事を知っているんだな……」

「ええ~、大したことじゃありませんよ。本当に」

 褒められたものの、いささか恥ずかしい。レギーナは頬を紅潮させて、恥ずかしそうにそう言った。クルトとクラーラはロルフより先に歩き始め「おにいちゃん!」と振り返る。

「それでは、また」

「はい」

 3人を見送りながら、レギーナは「一体明日何をいただけるのかしら?」と疑問に思うばかりだった。
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