修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
「2人とも眠ってしまったわ……」

 遊び疲れた2人は、ベンチで互いにもたれかかった状態で眠ってしまった。慌てて離れから毛布を持ってきて2人にかけるレギーナ。

(よかった。週に一度のチェックは明日だし、誰も今日はここを見に来ないわよね……風が気持ち良いし、毛布も一枚だけで良いでしょう……)

 穏やかな日差しに柔らかい風が吹いて心地よい。2人の横にレギーナも座って様子を見ていると、少し離れた場所から人が歩いて来る姿が見える。もしかして、チェックは今日だっただろうか、と慌ててレギーナは立ち上がった。が、そこにいたのは、庭師のような服を着た男性だ。

「すまない。この辺で双子を見なかっただろうか」

「あっ、ここに、ここにいます!」

 手をあげて振ると、彼は近寄って来た。

(わ、わ、わあああ……めちゃくちゃ……顔がいい~~!!)

 すらりと背の高い青年は、およそ22,3歳に見える。そう思うと、クルトとクラーラの兄ではないのだろうか。まさか、父親だろうか。瞳は2人と同じく緑色で、髪は巻き毛というより少しくせっ毛のように見える。精悍な顔立ちできりっとしているが、次の瞬間彼はへにゃっと笑う。

「おっ、ありがとう。あんたはこの離れの担当?」

「はい。先週からこちらにご厄介になっています」

「そうか。俺はロルフって言うんだ。弟と妹が手を煩わせたようで申し訳ないな。今、連れていくので……」

 そう言ってロルフは2人を起こそうとした。が、それへレギーナは

「今眠ったばかりなので、もう少ししてからでは駄目でしょうか? それとも、庭師さんはお時間がないのでしょうか」

 と尋ねる。ロルフはぱちぱちと瞬きをしてレギーナを見て、それから「あー……」と困惑の声をあげた。

「?」

「いや。時間はまだ大丈夫なんだけどさ……迷惑じゃないのか?」

「大丈夫ですよ。あっ、そうだ。もしお時間あるなら、ここでお茶を飲んで行かれるのはどうですか? あれです。わたし、修道院からお茶を持ってきているので、こちらのメーベルト伯爵邸の懐からは出ていないお茶なので、よかったら!」

「修道院?」

「はい。わたし、先週まで修道院にいたんです……ちょっと待っててくださいね!」

 そう言ってレギーナは離れに入っていく。ロルフはそれを見送ってから

「まったく。2人共、たくさん遊んでもらったのか? はは、幸せそうに眠って……」

と笑い、ずれた毛布を掛け直してやった。
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