復讐の時が来た~レベル1『シンデレラストーリー』
 一輪の花と破れ傘を左右の第一上肢に持ち、第二上肢で竹馬の幹を握った異教の神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーの立像を梯子に乗って拭き掃除していたシンデレラ・アールースは、とても危険な作業に集中するあまり大切な呪文を唱えるのを忘れていた。その失態を見逃さない女がいた。意地悪な美女、ドブロイ・ナッヴァースである。彼女は甲高い声で注意した。
「ちょいお前、そこのお前だよ! なにをやってんだい!」
 梯子の下から怒鳴りつけられたシンデレラ・アールースは俯いて答えた。
「掃除ですけど」
「見りゃ分かるよ、そんなこと! あたしが言いたいのはね、なにをやってんのかってことだよ!」
「ですから、吹き掃除ですけど」
「あーあーあーあ―そんなことを聞いてんじゃないわよ! どうして呪文を唱えていないのかって訊いてんだよ!」
「え、言ってますけど」
 その返答を聞いてドブロイ・ナッヴァースは地団駄を踏んだ。
「ふざけたこといってんじゃないわよ!」
「え、ふざけてませんけど」
 そう答えるシンデレラ・アールースはの整った顔は真剣そのものだ。それが義姉ドブロイ・ナッヴァースをさらに苛立たせた。
「なに、その言い草! 頭にくる!」
 実際のところシンデレラ・アールースは呪文を唱えていなかった。しかし彼女自身の感覚では、確かに唱えていたのである。掃除に没頭していたので、そのあたりの記憶が曖昧なのだ。
「とにかく、言いましたから」
「な~に~言ってんだい! 聞こえていなかったよ!」
「そうですか」
「そうですかあ、じゃない! ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィー様のお身体に触るときは、お許しの呪文を唱えていないといけないんだよ! 忘れたとは言わせないよッ!」
 なんか知らんけど、そういう教義というか宗教上のルールがあるのだ。シンデレラ・アールースはソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィー教の信者ではないので、どうしてそんなことをしなければならないのかという理由が、まったく分からない。知りたいとは思わない。熱心な信者のドブロイ・ナッヴァースならば知っているかもしれないが、尋ねる気にはなれない。二人は不仲だった。
 シンデレラ・アールースの義理の姉ドブロイ・ナッヴァースは美しい顔を歪ませた。
「そんなんじゃ、今夜のパーティーには連れて行ってやれないね!」
 そのセリフを聞き、シンデレラ・アールースは息を呑んだ。
「そんな! そんなの、酷すぎます! パーティーに連れて行ってくれるって、約束だったじゃないですか!」
 くくく、とドブロイ・ナッヴァースは笑う。
「それは唱えるべき呪文を唱えた場合だけさ」
 歯ぎしりしながらシンデレラ・アールースは梯子を降りた。
「私は他にもやることがあるんです。吹き掃除は、なんの仕事もしていないお義姉さまがやったらいいと思います」
「これはね、修行なんだよ。吹き掃除は精神を高める大事な修行なんだよ。霊的な地位の低いお前以外に誰がやる? この家の中には、いないよ、そんな奴は」
 吹き掃除をすると、宗教的になにか良い効果があるらしいが、シンデレラ・アールースはまったく納得できなかった。雑巾を床に叩きつける。
「それじゃ私は霊的な地位が低いままで結構です。下劣な精神のままで、このまま一生やっていきますんで」
 ドブロイ・ナッヴァースはブチ切れた。
「きいい! なにさ、このアマ!」
 つかみかかろうとした義理の姉の頭をつかみ、梯子の枠にガンガンぶつけたシンデレラ・アールースは、ドブロイ・ナッヴァースが床の上に引っ繰り返るのを放置して台所へ向かった。もう一人の義理の姉シズメッタ・ナッヴァースが、義妹が来るのを待っているのだ。
「遅いわね。早く始めてよ」
 台所のテーブルでハーブと胡椒の入ったサボテン茶を飲んでいたシズメッタ・ナッヴァースは、駆け込んできたシンデレラ・アールースを睨んで、そう言った。
「ごめんなさい、今すぐ始めます」
 シンデレラ・アールースはカボチャを切り始めた。シズメッタ・ナッヴァースはカボチャが好物で、それを使ったサラダやパイを昼食に食べたいと言い、義理の妹に調理を命じたのだ。
 作ってくれたら母にお願いして、お前をパーティーに連れて行ってあげる……と約束してくれたのでシンデレラ・アールースは話に乗った。同じ義理の姉ドブロイ・ナッヴァースの言いつけを破っても、こちらの姉が約束を守ってくれたら大丈夫だろうという計算が合った。
 しかしカボチャは固かった。包丁の刃が立たないのだ。必然的に、調理は遅れた。空腹のシズメッタ・ナッヴァースは苛立ち始めた。
「遅い遅い遅い! そんなんじゃ、パーティーに連れて行けないわよ」
「頑張ってます」
「んなに、その言い方。言い訳なんかしてないで、手を動かしなさいよ、手を」
「動かしてます」
「あ~お腹空いた。あんた、姉を飢え死にさせる気? あたしを飢え死にさせて、それでこの家の財産を相続するライバルを一人減らそうって考えてんじゃない? え、どうなのよ、どうなのよ?」
 ここで飢え死にさせるのなら、私があんたたちのためにいつも作っている料理に毒を入れるって! とシンデレラ・アールースは心の中で叫んだ。燃える怒りが力となって、カボチャは原形を留めぬくらいに粉砕された。そしてカボチャのサラダが完成する。
「できました」
 礼も「いただきます」も言わずにカボチャのサラダを貪り食ったシズメッタ・ナッヴァースは言った。
「パンプキン・パイは?」
「え、それも食べるんですか?」
「食べるに決まっているじゃない!」
「でも、私がカボチャのサラダを作っている間、なにも言わなかったじゃないですか」
「もう言ってある、最初に」
 そう言ってシズメッタ・ナッヴァースは、本稿の一部を指で示した。
 ↓
シズメッタ・ナッヴァースはカボチャが好物で、それを使ったサラダやパイを昼食に食べたいと言い、義理の妹に調理を命じたのだ。
 ↑
「ほら、ちゃんと言ったじゃない」
「言ったと言っても、それは地の文の中のことで」
「だからなに。あたしはあなたに命じたの。それに変わりはないでしょ。あ~あ、これじゃパーティーに連れて行ってやれないわ」
 そう言ってニヤッと笑ったシズメッタ・ナッヴァースにシンデレラ・アールースが食って掛かる。
「そんなの、酷いです!」
「ふふふ、約束を破った人間にはお仕置きをしないとね」
 怒り心頭のシンデレラ・アールースの手が包丁の方へ伸びた、そのときだった。
「いつまで飯を食ってんのさ! パーティーへ行く準備を始めな!」
「お義母さま!」
 シンデレラ・アールースの義理の母ヒュードルシア・ナッヴァースが台所へ入って来た。皿の上に付着したカボチャのサラダをべろべろ舐めていた実の娘シズメッタ・ナッヴァースの背中を叩いて台所から追い払う。
「まあったく、シズメッタは本当に意地汚いんだから! 宗教狂いのドブロイといい、愚図のシンデレラといい、うちの娘どもはどいつもこいつもパッとしないったらありゃあしない!」
 愚図と呼ばれたシンデレラだが、二人の義姉と同列に扱われたのは悪いなりに喜ばしいことと言えた。ヒュードルシア・ナッヴァースは実子の二人の娘と継子であるシンデレラの間に明確な区別を作っている。連れ子である上の二人の娘は基本的に甘やかしているけれど、再婚した夫の前妻の娘であるシンデレラには厳しい態度を崩さない。まるで使用人であるかのように色々な家の仕事をやらせている。
 いや、使用人ならば、仕事が辛ければ辞められる分、選択肢があると言えよう。シンデレラには、それがない。彼女の父つまりヒュードルシアが再婚した夫は金持ちであり、大勢の使用人を雇う金はあるのだが、必要最小限の召使しか屋敷にはいなかった。
 その理由は簡単だ。継母と二人の義姉がシンデレラを意地悪するために、雇人を減らしているのである。
 シンデレラは、そんな境遇に耐えていた。耐えられない時はあるけれど、出来る限りの努力をしている。それは、こういう機会があるからだ。つまり、お城で開かれる豪華なパーティーの話が舞い込んだときのためだ。
「お義母さま、私もお城のパーティーに行きたいです。お義姉さまたちから命じられた仕事は全部きちんと済ませました。お願いです、ご褒美にパーティーで連れて行って下さいませ!」
 懇願するシンデレラに向かって、継母のヒュードルシア・ナッヴァースは言った。
「きちんと済ませただって? あたしの目を誤魔化せると思ってんのかい!」
 ドブロイ・ナッヴァースから命じられたソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーの立像の吹き掃除を途中で放棄しただけならまだしも、ドブロイの頭を梯子にガッツンガッツンぶつける暴行を加えたこと、そしてもう一人の義姉シズメッタのために用意する約束だったパンプキン・パイを作らなかったことを、ヒュードルシアは指摘した。
「暴れん坊の約束破り娘を王子様がいらっしゃるパーティーで連れて行っていけるわけがないでしょうが! よく考えてからものを言えってんだよ!」
 そう叫んでせせら笑った継母の顔面にパンチを叩きこみたい衝動を、シンデレラは辛うじてこらえた。ここで事件を起こしたら、自分の負けだと思ったのだ。
 ヒュードルシアは台所から出て行った。顔をこわばらせたシンデレラは拳を握り締めたまま、その場に立ち尽くす。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 ここまでの原稿を読み終えて、ナッヴァースは言った。
「続きは? アールース、続きを早く読ませてくれ」
 親友から催促されたアールースは物憂げな表情で窓の外を見ていた。鉛色の空の下に横たわる、泣き叫ぶ乙女の像を頭上に頂いた尖塔が並ぶ沈鬱な街を、ナッヴァースも一緒になって見た。すぐに飽きた。
「次の原稿を、はよ」
 要求が聞こえていないかのようにアールースはハバロフスク産のリンゴ酒を啜り、それからハバナ葉巻を一服した。
「次の原稿を、早く読ませろっての」
 そう言ってナッヴァースは水タバコを吸った。続けざまに吸って、また言った。
「早く、早く、早く、早く原稿を読ませろよ」
 ハバナ葉巻の紫煙をブワッと吐き出してアールースは言った。
「書いてない」
「あ?」
 ちょっと間抜けな印象を与えかねない返事をしてしまったナッヴァースに、アールースは申し訳なさそうに繰り返した。
「続きをね、うん、続きはねえ……まだ書けていないんだよ」
「んばあっ、そんなんで大丈夫なのか?」
「うん……そうだねえ」
「間に合わないぞ、締め切りに」
 ナッヴァースが指摘しているのは、とある小説コンテストの締め切りが迫っているということだった。小説家志望の友人アールースは、その公募に出すための原稿をナッヴァースに読ませ、感想や直すべき点を指摘してもらっていた。その原稿の完成が遅れているのだ。
 このままでは間に合わないと、ナッヴァースは重ねて言った。アールースは物憂い声で答えた。
「実はね、そこで相談なんだよ」
 リンゴ酒の入ったグラスを干したアールースは、ナッヴァースを見つめた。
「一緒に続きを考えてくれないか?」
 ナッヴァースは窓の外を一瞥した。雨が降りそうな空模様だった。雪になるかも、と彼は考えた。そうなる前に帰りたい……だが!
「そう言われると、放ってはおけないな。分かった、一緒に続きを考えよう」
 アールースとナッヴァースは作戦会議を始めた。
 まずアールースが口火を切る。
「ここまでのところは、どうだろう? 駄目と言われても困るけど」
「そうだな、直している時間がないよ」
「でもね、根本的なところで、直さないといけない感じなんだ」
 不安を隠し切れない様子でアールースが言った。
「そのイベントはね、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだよ」
 ナッヴァースは訝しげに尋ね返した。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ?」
「そう、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジさ」
「早口言葉かよ」
「それとは違うけど、とにかく、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだって」
「ふうん」
「そういうことなんだ」
 納得しかけたナッヴァースだったが、また質問する。
「ところで、その恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジって、なんなの?」
 アールースは驚きを隠さなかった。
「え、知らないの!」
「うん」
「本当に? 本当にそうなの!」
「うん」
「知りもしないで原稿を読んでいたの」
「いや、全然知らないってわけではないよ。締め切りが近いってことは知ってた」
「それ以外は?」
「全然」
 首を横に振るナッヴァースに、アールースは説明を始めた。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジというのはね、恋愛ファンタジーがテーマの小説コンテストなんだ」
「へー」
「シチュエーションというのは、色々なシチュエーションを小説化するという意味なんだ」
「まあ、それは予想がつくよ」
「シチュエーションレベルアップチャレンジというのは、そのシチュエーションにはレベルがあって、そのレベルというのが三段階あるということなんだ」
 分かったような分からないような説明だった。言っているアールースも、分かった顔をしているけれど実際には分かっていない様子である。ナッヴァースは再確認を促した。
「そこが大切なところじゃないの? ちゃんと調べてみたほうがいいよ」
「そうだね。その前に水分を摂取しておくよ。この時期は空気が乾燥していて、喉が渇く」
 アールースはハバロフスク産のリンゴ酒のボトルを持ち、テーブルの上のグラスに注いだ。
「ナッヴァース、君も飲むかい?」
 ナッヴァースは断った。
「気持ちだけ受け取っておくよ。アルコールが入ると、文章が変になることがあるから」
「こっちも執筆するんで、酒は控えておいた方がいいかも」
「小説家の山田風太郎は、お酒を飲みながら書いていたようだけどね」
「だから面白い話を書けたのかもね」
 しばらく雑談をしていた二人だったが、状況が切迫していることを思い出し、執筆に向けた作戦会議を再開した。
「オーケン、じゃない、オーケー、始めよう」
 アールースがのっけから言い間違ったことに不安を抱きつつ、ナッヴァースは水タバコを吸った。
「よし、やろう。まずは、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジの募集要項をチェックしようか」

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恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ

イベント概要
この冬のベリカフェは寒さに負けない溺愛を♡

レベル&シチュエーションに沿った「恋愛ファンタジー」作品を募集します!

「ファンタジージャンルはチャレンジしたことがなくてハードルが高いかも…」

そんな作家さんのために、シチュエーションに合わせやすいキーワードをご用意いたしました!

心ときめく、甘さたっぷりの恋愛ファンタジーをお待ちしています♡

シチュエーションに沿っていればキーワードにない設定でもOKです!

また、ベリカフェ初投稿作品であれば既存作品でのエントリーも大歓迎!

全レベルにエントリーいただいた方を対象とした「フルコンプ賞」にもぜひチャレンジしてみてくださいね♪

エントリー作品を読む
①シチュエーションを選ぼう!
レベル1 『シンデレラストーリー』

ラブファンタジーの王道、シンデレラストーリー!

ファンタジージャンルに初めてチャレンジする作家さんにもおすすめです♪

溺愛満載のストーリーにヒーローの魅力をたっぷり詰め込んでください♡

おすすめキーワード

#シンデレラストーリー #溺愛 #不遇

レベル2 『セカンドライフ』
突然の婚約破棄、追放、はたまた婚姻やヒロイン自らの申し出まで⁉

様々な理由から始まるセカンドライフをお待ちしています!

ヒロインの能力や職業を活かしたストーリーを書きたい方に♡

おすすめキーワード

#セカンドライフ #第二の人生 #婚約破棄

レベル3 『身代わり婚』
仕える王女様、婚約者のいる姉、わがままな妹…

国や家のため、様々な人の身代わりになるヒロインを大募集!

身分差や切ない恋と相性抜群です♡

おすすめキーワード

#身代わり婚 #成り代わり #身分差

②選んだシチュエーションに好きなキーワードを組み合わせよう!
ヒロイン

虐げられ・捨てられ・崖っぷち・姉妹格差・愛を知らない・不遇な境遇

悪役令嬢・悪女・王妃・妾・侍女・メイド・転生幼女・男装令嬢

聖女・薬師・魔道具師・錬金術師・魔女・料理人・スキル持ち

ヒーロー

皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長

爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジ

その他

断罪回避・異世界転生・番・歳の差・身分差・白い結婚

もふもふ・スローライフ・逆転ストーリー・ざまぁ

①で選んだシチュエーションに沿っていれば、ここに書かれていないキーワードでもOK!

応募要項


レベル賞 〈レベルごとに1作〉

デジタルギフトカード5,000円分

フルコンプ賞〈全レベルに作品を1作以上エントリーした方の中から抽選で1名〉

デジタルギフトカード5,000円分

各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。

参加賞〈全エントリー作品の中から抽選で20作〉

電子図書カード1,000円分

テーマ

3つのレベルから好きなシチュエーションを選択していただき、あなたが思い描くラブファンタジーを書いてください。

キーワードは複数組み合わせていただいても構いません。選んだシチュエーションに沿っていれば、オリジナルの設定を追加することも可能です。

スケジュール

2023年12月20日(水)13:00 エントリー開始
2024年1月31日(水)13:00 エントリー〆切(部門賞・フルコンプ賞は完結〆切)
2024年3月上旬頃 結果発表

スケジュールは変更になる可能性があります。

応募資格

不問(プロ、アマ、年齢等一切問いません)

応募方法

STEP1

エントリーしたい作品の【作品編集】から、【設定】画面のコンテスト応募、ベリーズカフェ恋愛ファンタジーレベルアップチャレンジを選択します。

STEP2

エントリーする部門(レベル)を選択、あらすじを入力してください。

STEP3

ページ最下部の【設定を保存する】ボタンを押すとエントリー完了です。

事前に会員登録の上、作品投稿をお願いいたします。
あらすじとは、ストーリーの全容、登場人物の設定や大きな流れを簡潔に明記したもので、あらすじの内容を元に審査を進めさせていただきます。
コンテスト応募のあらすじは、他のユーザーには公開されません。(エントリー締め切り日まで編集できます。)
原稿枚数

Berry's Cafeにて文字数1万字~12万字以内に収めてください。

対象

応募サイト「Berry’s Cafe」でファンタジージャンルに設定され、読むことができる作品。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品に限ります。
部門賞、フルコンプ賞の対象は完結作品に限ります。参加賞は未完結でも対象となります。

以下に該当する作品のエントリーは不可となります。

「Berry’s Cafe」の規約に反するもの
過去に書籍化されたもの
書籍化の予定があるもの
本人以外に著作権及び著作隣接権があるもの
現在開催中である他のコンテストに応募しているもの
そのほか当編集部が不適切と判断したもの
注意事項

コンセプトに準じた作品であれば、複数エントリーしていただけます。
フルコンプ賞は各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品であれば、既存作品での応募も可能です。
既に他のサイトで発表されたものも応募可としますが、著作権および著作隣接権が完全にフリーであることを条件とします。

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 応募要項に目を通したナッヴァースが言った。
「最大のポイントは恋愛ってところだな。違うかい?」
 アールースは否定しなかった。
「それが必要最低条件って感じだね」
「その必要最低条件というのが正しい用語なのかはともかく、言いたいことは分かる。最低限クリアすべき条件ってことだね」
「そう、その通りなんだけど……」
 言葉に詰まったアールースの思いを、ナッヴァースが代弁する。
「恋愛の要素がないよね」
「そうなんだよ」
「ロマンスが入ってないとアウトだ」
 硬い表情でナッヴァースが断言すると、アールースは顔を両手で覆った。
「そこなんだよ、そこで弱っているんだ」
 続いてアールースが天を仰ぐ。
「女性主人公は書いた。自分なりにだけど、魅力的なヒロインを造形できたと思う。自分なりに、だけど」
「まあ、人によって魅力は異なるから、そこは拘らなくていいと思うよ。うん、これで十分に魅力的だよ」
 ナッヴァースの励ましがアールースの自信を多少なりとも回復させたようで、やや明るい顔で話を続ける。
「相手役をどうするか、これに苦しんでいるんだ」
「う~ん、ここに書いているもののうちから、適当に見繕って出せばいいんじゃないの?」
「おでんを頼んでいるようにはいかないよ」
 ナッヴァースは<ヒーロー>の項目を見返した。
「皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長、か」
「爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジってのもある」
「人材募集みたいだな。新聞に広告でも出したらどうだ?」
「来られたって困る」
 腕組みをしたナッヴァースが唸る。
「う~ん、読者の好みに合ったヒーローにすべきなんだけど、ヒロインや話の筋に合致させないことにはなあ」
「ストーリーと合っていないヒーローを突然出しても変だよね」
「ちぐはぐだと話し全体が変になってしまうさ。そこで、どうするか、だよなあ」
 ナッヴァースは人差し指を突き上げた。
「他にも重要な問題がある。極めて重大な問題だ」
 アールースは息を呑んだ。ナッヴァースが深刻な顔で答えを告げた。
「時間だよ、とにかく時間が無い。これを忘れたら、この話はお終いになってしまう」
「そう……締め切りの問題があった」
「時間的制限内でヒロインとヒーローをくっつけることを、最優先事項としよう」
 ナッヴァースの出した結論にアールースは同意した。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 ヒュードルシア・ナッヴァースとドブロイそしてシズメッタはお城のパーティーに出かけた。屋敷に一人残されたシンデレラ・アールースは毒作りを始めた。トウゴマ(ヒマ)の種子から猛毒のリシンを抽出するのである。リシンは解毒剤が存在しない。意地悪な継母ヒュードルシアとその二人の娘ドブロイ&シズメッタには、良い薬となるだろう。
「くっくっく……この毒で私を虐めた奴ら全員を殺してやる」
 美しい顔に残忍な笑いを浮かべたシンデレラの顔が凍りついた。台所の入り口に綺麗な服を着た美青年が立ち、自分を見てニヤニヤ笑っていることに気付いたからだ。
「あなた……だれ!」
 美青年が言った。
「この国の王子だ。お前をパーティーに誘おうと思ってな。驚かそうと思ってコッソリ入ってきたら、俺のお姫様は毒の精製に夢中で、こっちが驚かされたよ」
「あなた、王子様? そして私を迎えに来た? え、ちょま、ねえ、ちょっと、ちょっと待って!」
 リシンの入ったガラス瓶を手にシンデレラはテーブルから立ち上がった。王子を自称する美青年は後ずさりした。
「ガラス瓶をテーブルに置け。投げ付けられたらかなわん」
 シンデレラはガラス瓶をテーブルに戻した。
「これは毒ではありません。ひまし油です」
「リシンを作る奴は皆そう言う。まあ、それはどうでもいいさ。さあ、パーティーへ行くぞ」
「ちょっと待って! あなたが王子様だという証拠を見せて下さい」
 王子は懐から印籠を出しシンデレラに見せた。印籠には王家の者であることを示す家紋入りの紋章があった。だが、シンデレラは疑い深かった。
「これだけじゃ証拠になりません!」
「分かった。プレゼントを渡せば疑いは晴れるだろう」
 王子は両手を叩いた。大きな箱を幾つも持った召使いたちが台所へ入って来た。
「ドレスに帽子それと靴やアクセサリーを用意した。さっさと着替えろ」
 召使いたちは箱を次々に開けていった。中に入っている豪華な品々にシンデレラは驚愕した。
「これを私に? どうして、どうしてなんです……」
 王子はぶっきらぼうな口調で言った。
「好きだからだ。身分を隠して街を歩いているとき、お前を見かけて惚れてしまった。お前のことを調べた。俺と一緒になれば、もう苦労はさせない。ついて来い」
「で、でも……」
 王子は強引だった。話の急展開についていけないシンデレラを無理やり着替えさせ、カボチャの形をした馬車に乗せ城へ連れて行くとパーティー会場の演壇に上げ「紹介する、俺の婚約者シンデレラだ」と宣言した。
 ヒュードルシア・ナッヴァースとドブロイそしてシズメッタが大いに驚いたことは言うまでもない。
 その晩以降、この三人の姿を見た者はいない。一説にはシンデレラが三人を監禁し残虐な拷問をしているとされている。あるいは殺されたとも言われている。シンデレラによる毒殺が疑われているが、次期王妃の復讐を恐れ、証言する者は誰もいないとのことである。
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