夢を魔法で実現だ~レベル2『セカンドライフ』
 夫の不能に不満を抱いたデレラ・アールースは家を出ることにした。気の毒だが婚約時の約束通り、財産の半分はいただくことにする。文句は言わせない。そういう契約なのだ。哀れな夫よ、さようなら!
 広大な土地や豪華な家屋敷を売り払うとか高価だが大きめな芸術品を持って行くなんて面倒な手間は掛けたくなかったので、魔法の品々を服のポケットやトランクケースに詰め込んで出発した。夢にまで見たセカンドライフの始まりだ。
 デレラ・アールースは短い結婚生活を送った館を出ると、近くの泉へ向かった。そこで体を清め、神聖な魔法を唱えるつもりだった。全裸となって冷たい水に肩まで浸かり、寒くて死にそうになったが、それもこれも素敵な第二の人生のためである。耐えろ! と心の中で叫ぶ。泉から出て体を拭き服を着た彼女は早速セカンドライフのための魔術を開始した。
 まずは幼い子供の頃から憧れていた男装の麗人へ変身することにした。トランクの中から玩具のコンパクトミラーを取り出す。いや、玩具に見えるが実は魔法のアイテムである。これを使って変身するのだ。
「よっしゃー! 行くでー!」
 デレラ・アールースは両腕をバアッフンバアッフンと何度も広げて気合を入れた。とどめに両手の掌で左右の頬をバッチンバッチン叩き、魔法の呪文を唱える。
「ウリシュ、ウーン、サクシフ、スミスオークライン、アガック、ガガク、シィムラー、ケーン! 男装の麗人にな~れ!」
 玩具に見える魔法のコンパクトミラーの鏡面がキラキラ輝き、全身が映る姿見鏡に変化した。デレラ・アールースは期待を込めて鏡を覗き込む。
 鏡の中には、赤黒く縁どられた双眸に得体の知れぬ狂気と底知れぬ悪意をたたえた生き物が二本の足で立っていた。長く黄色い歯と黄緑色の鱗そして肉切り包丁のように鋭い鉤爪を備え、切れ込みの入った太い尻尾をブルブル震わせている。ねじ曲がった角の生えた頭部には無数のリベットナットが打ち込まれていたが、その用途は不明だ。牡牛めいた巨大な鼻には輪が嵌められてる。その輪には紙片が紐で結ばされており。その紙片には<デレラ・アールース>と太字で書かれていた。名札らしい。
(なんじゃこりゃ~!)
 鏡の中の自分を見てデレラ・アールースは確かにそう叫んだつもりだったが、聞こえてきたのは「も~!」という牛の鳴き声だけだった。
(あ~マジでムカつきぃ~! 畜生め! 呪文を失敗した! クソッタレ! やり直し、やり直し!)
 デレラ・アールースは腹の中で罵り魔法の呪文を唱え直した。
(ウリシュ、ウーン、サクシフ、スミスオークライン、アガック、ガガク、シィムラー、ケーン! 男装の麗人にな~れ!)
 そう言っているつもりだが、耳に聞こえてくるのは「も~! も~! も~! も~!」という牛の鳴き声である。
 ボン! と大きな音がして白い煙がもうもうと湧き上がった。その煙が晴れると、鏡の中に何かの姿が浮かび上がった。
 それの外見は基本的には二足歩行の爬虫類であったが、羽毛の鶏冠と立派な肉垂を持ち、耳はエルフのように長く鋭く尖っていて、しかし顔はエルフのように優美というわけではなく、むしろ外側をエルフに似せ仲間だと思い近づいてきたエルフを捕食する妖魔の一種、偽エルフ族を思わせる性悪さがにじみ出ていた。前肢は蜘蛛の足のように細く長く、その先に人間の手に似た物体がある。だが、それは手ではない。実は口である。獲物が近づくと、バアッと開き、そのままパクっとくわえて、消化液を出して溶かす。口となる開口部が開き、そのまま獲物を吸引するのである。後肢は前肢に比べると、圧倒的に短い。太く短い脚は大地をがっしりと踏みしめている。無いに等しい足首には無数の毛が生えている。冷え性なので、足首を温める毛が必要なのだ。それ以外はほとんど体毛が無い。定期的に脱毛処理をしているためだ。その費用は決して安くない。しかし美容には金を惜しまないし、どれだけの時間を費やしても後悔はない。美は至上だ……と、その謎の種族は種族全体の生き方として美の追求を第一に考えている。だが、その美的感覚はデレラ・アールースの理想とははなはだしく異なっていた。
「うぎゃ~、なにこれ! ちょっと、こんなの男装の麗人でもなんでもないって! しかも肉垂があるって、これもしかしてオスじゃない! やーよ! 絶対にいや!」
 三度目の正直とばかりに、今まで以上の気合を込めてデレラ・アールースは魔法の呪文を唱える。
「ウリシュ、ウーン、サクシフ、スミスオークライン、アガック、ガガク、シィムラー、ケーン! 男装の麗人にな~れ!」
 またも煙がモクモク湧いてきた。デレラ・アールースは濃い霧のような煙が晴れるのを待った。だが、いつまで経っても灰色の煙は消えない。彼女は鏡の中を凝視した。白い霧が見えた。だが、なぜか黒く映る人影がある。細長い影だった。左右に揺れ動いている。手も足も判然としない。顔と思しき部分に薄い黄色あるいは赤の葡萄酒色にも見える二つの光点がある。その光の点が目玉だとすれば、その上部にあるものは額や頭部なのだろうが、白と黒と灰色の切れ目は見極められなかった。淫らな水音を発する口らしい亀裂が上下左右の十字型にある。そこから何本かの触手が伸びていた。全体的に背後の煙あるいは霧との区別がつかない。何もかもが幻だと言われたら、そう信じる人間がいるかもしれなかった。
「え~ちょっと待ってよ、これなんなの? 男装の麗人は出て来ないの? どうなってんのよ!」
 デレラ・アールースは奥歯に埋め込んだ魔法リセットボタンを噛んだ。変身の魔法がフッと解ける。元の綺麗な女の姿に戻った彼女は服のポケットに入れた魔法アイテムのポケットマニュアルを取り出した。ページをペラペラとめくり、困ったときの対処法が記された箇所を探す。あった。
「え~と、なになに……困ったときはいつでも魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーをお呼び下さいってか! よ~し、呼んだろうじゃないのさ!」
 大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーの召喚に必要な焚火のための薪を泉の近くの森から拾ってきたデレラ・アールースは、それで火おこしを済ませた。準備完了である。
 デレラ・アールースは逆立ちした。天地が逆になった、その姿勢で大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーを呼び出す呪文を唱える。
「つるっぱげの父よ、息が臭い母よ、女にもてない兄よ、婚約破棄された姉よ、引きこもりの弟よ! 我に力を与えたまえ! ていっ!」
 デレラ・アールースが呪文を唱え終わると、炎が燃え盛る焚火の中から何か小さなものが飛び出してきた。
「あち、あち、あっちいいいい!」
 一輪の花と破れ傘を左右の第一上肢に持ち、第二上肢で竹馬の幹を握った小柄な男性は焚火から遠く離れたところまで逃れると、そこで何やらブツブツぼやいた。
「呼び出しの方法、これじゃなくても良くないかなあ。もっと安全な召喚方法があるんじゃないのかあ? 呼び出されるたびに火傷とかさ、普通ないって。これで焼死したらさあ、やってられないって。いや、もう本当にね、マニュアル修正してほしいわ。今のやつを全部回収して、新しく修正版を配ってほしいわ」
「えっと、ちょっと済みませんけど」
 デレラ・アールースは自分の歩幅より背丈が小さい男性に尋ねた。
「あなた、ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーさん? 魔法の道具のトリセツの案内役の?」
 男は頷いた。
「いかにもたこにも。しかし、取扱説明書の案内役というのは正確な肩書ではない。それは、あくまでも仮の姿。本来の呼称は悪魔の中の悪魔、大邪悪魔神が変じて異教の神となるも、その本体は何ら変わらぬソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィー、その人なり」
「悪魔なのか神なのか人なのか、よくわからないけど、まあ、それはいいわ。用があるの」
「何なりとどうぞ」
「実は、かくかくしかじか」
 魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーはフンフンと頷いた。
「うーむ、なるほど、うーむうむうーむ、なるほどなあ」
 デレラ・アールースは釣られて頷いた。
「で、どう? なにが原因なのか、わかった?」
「いいや、ちっとも。具体的に言ってもらわないと」
「じゃ頷くな」
 男装の麗人に変身しようと、先ほどからずっと変身の魔法を唱えているが、変な生き物に変化するだけで、いつまで経ってもさっぱり目的の男装の麗人になれず、困っている――といった悩みをデレラ・アールースはぶちまけた。
「で、どうしたらいいのかってことを聞きたくて、あなたを召喚したってわけなんだけど」
 魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーは、またもフンフンと頷いた。
「そうかそうか、うーむ、なるほど、うーむうむうーむ、なるほどなあ」
 デレラ・アールースは、またも釣られて頷いた。
「で、どうなの? なにが原因なのか、今度こそわかったかしら?」
 ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーは首をひねった。
「う~~~ん、どうなんだろう? これが、その魔法の姿見でしょう? 変身するときに使った品物。見たところ異常は見当たらないし、中の方かなあ。それなら、これは工場へ送った方がいいかも。原因を調べるのに、時間が掛かるかも」
 魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーを呼び出せば、すぐに問題解決だと確信していたので、デレラ・アールースは落胆した。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 ここまでの原稿を読み終えて、ナッヴァースは言った。
「続きは? アールース、続きを早く読ませてくれ」
 親友から催促されたアールースは物憂げな表情で窓の外を見ていた。鉛色の空の下に横たわる、泣き叫ぶ乙女の像を頭上に頂いた尖塔が並ぶ沈鬱な街を、ナッヴァースも一緒になって見た。すぐに飽きた。
「次の原稿を、はよ」
 要求が聞こえていないかのようにアールースはハバロフスク産のリンゴ酒を啜り、それからハバナ葉巻を一服した。
「次の原稿を、早く読ませろっての」
 そう言ってナッヴァースは水タバコを吸った。続けざまに吸って、また言った。
「早く、早く、早く、早く原稿を読ませろよ」
 ハバナ葉巻の紫煙をブワッと吐き出してアールースは言った。
「書いてない」
「あ?」
 ちょっと間抜けな印象を与えかねない返事をしてしまったナッヴァースに、アールースは申し訳なさそうに繰り返した。
「続きをね、うん、続きはねえ……まだ書けていないんだよ」
「んばあっ、そんなんで大丈夫なのか?」
「うん……そうだねえ」
「間に合わないぞ、締め切りに」
 ナッヴァースが指摘しているのは、とある小説コンテストの締め切りが迫っているということだった。小説家志望の友人アールースは、その公募に出すための原稿をナッヴァースに読ませ、感想や直すべき点を指摘してもらっていた。その原稿の完成が遅れているのだ。
 このままでは間に合わないと、ナッヴァースは重ねて言った。アールースは物憂い声で答えた。
「実はね、そこで相談なんだよ」
 リンゴ酒の入ったグラスを干したアールースは、ナッヴァースを見つめた。
「一緒に続きを考えてくれないか?」
 ナッヴァースは窓の外を一瞥した。雨が降りそうな空模様だった。雪になるかも、と彼は考えた。そうなる前に帰りたい……だが!
「そう言われると、放ってはおけないな。分かった、一緒に続きを考えよう」
 アールースとナッヴァースは作戦会議を始めた。
 まずアールースが口火を切る。
「ここまでのところは、どうだろう? 駄目と言われても困るけど」
「そうだな、直している時間がないよ」
「でもね、根本的なところで、直さないといけない感じなんだ」
 不安を隠し切れない様子でアールースが言った。
「そのイベントはね、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだよ」
 ナッヴァースは訝しげに尋ね返した。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ?」
「そう、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジさ」
「早口言葉かよ」
「それとは違うけど、とにかく、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだって」
「ふうん」
「そういうことなんだ」
 納得しかけたナッヴァースだったが、また質問する。
「ところで、その恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジって、なんなの?」
 アールースは驚きを隠さなかった。
「え、知らないの!」
「うん」
「本当に? 本当にそうなの!」
「うん」
「知りもしないで原稿を読んでいたの」
「いや、全然知らないってわけではないよ。締め切りが近いってことは知ってた」
「それ以外は?」
「全然」
 首を横に振るナッヴァースに、アールースは説明を始めた。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジというのはね、恋愛ファンタジーがテーマの小説コンテストなんだ」
「へー」
「シチュエーションというのは、色々なシチュエーションを小説化するという意味なんだ」
「まあ、それは予想がつくよ」
「シチュエーションレベルアップチャレンジというのは、そのシチュエーションにはレベルがあって、そのレベルというのが三段階あるということなんだ」
 分かったような分からないような説明だった。言っているアールースも、分かった顔をしているけれど実際には分かっていない様子である。ナッヴァースは再確認を促した。
「そこが大切なところじゃないの? ちゃんと調べてみたほうがいいよ」
「そうだね。その前に水分を摂取しておくよ。この時期は空気が乾燥していて、喉が渇く」
 アールースはハバロフスク産のリンゴ酒のボトルを持ち、テーブルの上のグラスに注いだ。
「ナッヴァース、君も飲むかい?」
 ナッヴァースは断った。
「気持ちだけ受け取っておくよ。アルコールが入ると、文章が変になることがあるから」
「こっちも執筆するんで、酒は控えておいた方がいいかも」
「小説家の山田風太郎は、お酒を飲みながら書いていたようだけどね」
「だから面白い話を書けたのかもね」
 しばらく雑談をしていた二人だったが、状況が切迫していることを思い出し、執筆に向けた作戦会議を再開した。
「オーケン、じゃない、オーケー、始めよう」
 アールースがのっけから言い間違ったことに不安を抱きつつ、ナッヴァースは水タバコを吸った。
「よし、やろう。まずは、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジの募集要項をチェックしようか」

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恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ

イベント概要
この冬のベリカフェは寒さに負けない溺愛を♡

レベル&シチュエーションに沿った「恋愛ファンタジー」作品を募集します!

「ファンタジージャンルはチャレンジしたことがなくてハードルが高いかも…」

そんな作家さんのために、シチュエーションに合わせやすいキーワードをご用意いたしました!

心ときめく、甘さたっぷりの恋愛ファンタジーをお待ちしています♡

シチュエーションに沿っていればキーワードにない設定でもOKです!

また、ベリカフェ初投稿作品であれば既存作品でのエントリーも大歓迎!

全レベルにエントリーいただいた方を対象とした「フルコンプ賞」にもぜひチャレンジしてみてくださいね♪

エントリー作品を読む
①シチュエーションを選ぼう!
レベル1 『シンデレラストーリー』

ラブファンタジーの王道、シンデレラストーリー!

ファンタジージャンルに初めてチャレンジする作家さんにもおすすめです♪

溺愛満載のストーリーにヒーローの魅力をたっぷり詰め込んでください♡

おすすめキーワード

#シンデレラストーリー #溺愛 #不遇

レベル2 『セカンドライフ』
突然の婚約破棄、追放、はたまた婚姻やヒロイン自らの申し出まで⁉

様々な理由から始まるセカンドライフをお待ちしています!

ヒロインの能力や職業を活かしたストーリーを書きたい方に♡

おすすめキーワード

#セカンドライフ #第二の人生 #婚約破棄

レベル3 『身代わり婚』
仕える王女様、婚約者のいる姉、わがままな妹…

国や家のため、様々な人の身代わりになるヒロインを大募集!

身分差や切ない恋と相性抜群です♡

おすすめキーワード

#身代わり婚 #成り代わり #身分差

②選んだシチュエーションに好きなキーワードを組み合わせよう!
ヒロイン

虐げられ・捨てられ・崖っぷち・姉妹格差・愛を知らない・不遇な境遇

悪役令嬢・悪女・王妃・妾・侍女・メイド・転生幼女・男装令嬢

聖女・薬師・魔道具師・錬金術師・魔女・料理人・スキル持ち

ヒーロー

皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長

爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジ

その他

断罪回避・異世界転生・番・歳の差・身分差・白い結婚

もふもふ・スローライフ・逆転ストーリー・ざまぁ

①で選んだシチュエーションに沿っていれば、ここに書かれていないキーワードでもOK!

応募要項


レベル賞 〈レベルごとに1作〉

デジタルギフトカード5,000円分

フルコンプ賞〈全レベルに作品を1作以上エントリーした方の中から抽選で1名〉

デジタルギフトカード5,000円分

各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。

参加賞〈全エントリー作品の中から抽選で20作〉

電子図書カード1,000円分

テーマ

3つのレベルから好きなシチュエーションを選択していただき、あなたが思い描くラブファンタジーを書いてください。

キーワードは複数組み合わせていただいても構いません。選んだシチュエーションに沿っていれば、オリジナルの設定を追加することも可能です。

スケジュール

2023年12月20日(水)13:00 エントリー開始
2024年1月31日(水)13:00 エントリー〆切(部門賞・フルコンプ賞は完結〆切)
2024年3月上旬頃 結果発表

スケジュールは変更になる可能性があります。

応募資格

不問(プロ、アマ、年齢等一切問いません)

応募方法

STEP1

エントリーしたい作品の【作品編集】から、【設定】画面のコンテスト応募、ベリーズカフェ恋愛ファンタジーレベルアップチャレンジを選択します。

STEP2

エントリーする部門(レベル)を選択、あらすじを入力してください。

STEP3

ページ最下部の【設定を保存する】ボタンを押すとエントリー完了です。

事前に会員登録の上、作品投稿をお願いいたします。
あらすじとは、ストーリーの全容、登場人物の設定や大きな流れを簡潔に明記したもので、あらすじの内容を元に審査を進めさせていただきます。
コンテスト応募のあらすじは、他のユーザーには公開されません。(エントリー締め切り日まで編集できます。)
原稿枚数

Berry's Cafeにて文字数1万字~12万字以内に収めてください。

対象

応募サイト「Berry’s Cafe」でファンタジージャンルに設定され、読むことができる作品。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品に限ります。
部門賞、フルコンプ賞の対象は完結作品に限ります。参加賞は未完結でも対象となります。

以下に該当する作品のエントリーは不可となります。

「Berry’s Cafe」の規約に反するもの
過去に書籍化されたもの
書籍化の予定があるもの
本人以外に著作権及び著作隣接権があるもの
現在開催中である他のコンテストに応募しているもの
そのほか当編集部が不適切と判断したもの
注意事項

コンセプトに準じた作品であれば、複数エントリーしていただけます。
フルコンプ賞は各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品であれば、既存作品での応募も可能です。
既に他のサイトで発表されたものも応募可としますが、著作権および著作隣接権が完全にフリーであることを条件とします。

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 応募要項に目を通したナッヴァースが言った。
「最大のポイントは恋愛ってところだな。違うかい?」
 アールースは否定しなかった。
「それが必要最低条件って感じだね」
「その必要最低条件というのが正しい用語なのかはともかく、言いたいことは分かる。最低限クリアすべき条件ってことだね」
「そう、その通りなんだけど……」
 言葉に詰まったアールースの思いを、ナッヴァースが代弁する。
「恋愛の要素がないよね」
「そうなんだよ」
「ロマンスが入ってないとアウトだ」
 硬い表情でナッヴァースが断言すると、アールースは顔を両手で覆った。
「そこなんだよ、そこで弱っているんだ」
 続いてアールースが天を仰ぐ。
「女性主人公は書いた。自分なりにだけど、魅力的なヒロインを造形できたと思う。自分なりに、だけど」
「まあ、人によって魅力は異なるから、そこは拘らなくていいと思うよ。うん、これで十分に魅力的だよ」
 ナッヴァースの励ましがアールースの自信を多少なりとも回復させたようで、やや明るい顔で話を続ける。
「相手役をどうするか、これに苦しんでいるんだ」
「う~ん、ここに書いているもののうちから、適当に見繕って出せばいいんじゃないの?」
「おでんを頼んでいるようにはいかないよ」
 ナッヴァースは<ヒーロー>の項目を見返した。
「皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長、か」
「爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジってのもある」
「人材募集みたいだな。新聞に広告でも出したらどうだ?」
「来られたって困る」
 腕組みをしたナッヴァースが唸る。
「う~ん、読者の好みに合ったヒーローにすべきなんだけど、ヒロインや話の筋に合致させないことにはなあ」
「ストーリーと合っていないヒーローを突然出しても変だよね」
「ちぐはぐだと話し全体が変になってしまうさ。そこで、どうするか、だよなあ」
 ナッヴァースは人差し指を突き上げた。
「他にも重要な問題がある。極めて重大な問題だ」
 アールースは息を呑んだ。ナッヴァースが深刻な顔で答えを告げた。
「時間だよ、とにかく時間が無い。これを忘れたら、この話はお終いになってしまう」
「そう……締め切りの問題があった」
「時間的制限内でヒロインとヒーローをくっつけることを、最優先事項としよう」
 ナッヴァースの出した結論にアールースは同意した。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

「それじゃ男装の麗人は諦めた。他にも夢はいっぱいあるの! そっちを先に実現させる!」
 デレラ・アールースは死ぬまでに絶対やると決めた夢のリストをポケットから取り出した。
「悪役令嬢・悪女・王妃・妾・侍女・メイド・転生幼女・男装令嬢、それと聖女・薬師・魔道具師・錬金術師・魔女・料理人・スキル持ちになりたいんだけど、この男装令嬢は飛ばし! それで、書いていない仕事を代わりにやる! テイマー、テイマーになる!」
 そう宣言したデレラ・アールースは、隣に立っている魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーに言った。
「ねえねえ、話、聞いてた?」
「はあ、まあ」
「ということで、テイマーにして」
「チーマーなら知っているんですけどテーマーは詳しくないんです」
「テーマーじゃなくてテイマー。もふもふした可愛い動物を出せばいいの」
「それならお安い御用です」
 そう言って魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーはデレラ・アールースの耳の後ろの方から何かを出した。掌に乗せ顧客に見せる。
「これなんてどうでしょう?」
 高さは十センチ程度、人間のような外見をしているが全身が緑色の毛に覆われている生き物だった。頭部は甲殻類と蛸が混ざったような奇怪な形状をしていた。口の部分には触腕がおびただしくあり、赤黒い粘液をグチュグチュ出し続けている。前脚と後脚には鋭い鉤爪があった。
「この鉤爪には触らないで下さい。毒が分泌されていて、人の体内に入ると最悪の場合、死に至ります」
「ちょ、ちょま、ねええ、ちょっと待って! これは苦手! 無理!」
 デレラ・アールースはテイマーを断念し、別の夢を実現させることにした。
「イケメンに溺愛されたいの。相手は皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長それか爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジでお願い」
 ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーは掌に載せた小怪物に息をフッと吹きかけた。そして空に向かって投げる。小怪物は空中で全裸のイケメンになった。それが地表に降りる頃には、デレラ・アールースは恋に落ちていた。彼女は言った。
「これでいい、この人にする」
 顧客満足度ナンバーワンを誇る魔法アドバイザリースタッフの大邪悪魔神ソンムジャ・ゴドグマ・サーコヴィーは満足そうに頷き、その場を立ち去った。
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