砂漠の花嫁は略奪される~レベル3『身代わり婚』
 ナッヴァース家へ二つの縁談が、ほぼ同時に舞い込んだ。一つの縁談は異国の皇帝で、もう一つは資産家のアールース氏の後添いに、との話だった。
 その噂を聞き付けた人々は幾つかの理由で驚いた。その一つは、縁談を申し込まれたのが二人の娘――しかも二人とも結婚適齢期を迎えている――の母親ヒュードルシア・ナッヴァースだったことだ。確かにヒュードルシアは大きな瘤付き――しかも瘤は二つだ――とは思えぬ若々しさと美貌の持ち主だ。だからといって、異国の皇帝から結婚を申し込まれるとは予想外である。暇人が、その異国の皇帝について調べた。何やら怪しげな呪術に凝っていて、美人の母娘を生贄として邪神に捧げているらしいとの悪評が判明した――それが事実なのか、誰も分からないが、インパクトは十分にあり、人々は恐怖した。
 その噂はナッヴァース家の者たちも耳にした。ヒュードルシアは、そんなところへ嫁に行くのはごめんだと断った。それはそうだろう。それなら資産家のアールース氏の後添いに行く、ということで話が決まった。
 しかし問題があった。異国の皇帝からの縁談話は公式な外交ルートでの申し込みだった。断り方によっては外交問題に発展しかねない。そこで国務省(外務省)の担当者と話し合い、ヒュードルシアの代わりに年の離れた妹のラレデンシィーを嫁がせる話を向こうへ提案することになった。
 ラレデンシィーは圧倒的な美女ヒュードルシアより性的魅力は劣るが聡明な娘だった。まだ若い彼女には、将来の夢があった。それは自分の職業を持ち、自立した女性になることである。当然ながら、自分が怪しげな異国の皇帝に嫁ぐなど考えていない。両親から姉の代わりに結婚しろと言われたとき、断固拒否した。結婚するくらいなら死ぬとまで言った。だが、両国間の外交問題に発展し、最悪の場合は戦争が起こるとまで言われ、観念した。自分のせいで戦争が勃発し、それで罪のない兵士や一般人が死ぬことなど到底、耐えられなかったのである。
 かくしてラレデンシィー・ナッヴァースは異国の皇帝の妻あるいは邪神への生贄となるため祖国を旅立った。異国の皇帝と祖国の国務省(外務省)の両方から多額の結婚支度金を貰ったラレデンシィーの両親はホクホク顔で大喜びだったという。
 花嫁を乗せた蒸気船が異国の港に接岸した。その港湾都市から、その国を統治する皇帝が暮らす都までは距離がある。徒歩ではいけない。何しろ、途中には大きな砂漠が横たわっているのだ。輿に乗って砂漠を越える――なんてロマンチックな中世ファンタジーの時代より、この頃は文明が発展している。鉄道である。蒸気機関車が引っ張る客車に乗って都へ向かうのだ。
 皇帝がわざわざ差し回してくれた皇族専用の客車に乗り、ラレデンシィー・ナッヴァースは都へ向かった。この先どうなるのか、なにもわからない。彼女は自分の運命を既に諦めている。自分は姉の犠牲となり、親に売られたのだ。その悲惨さに、ただただ絶望している。もしも仮に、エゴイストの姉ヒュードルシア・ナッヴァースが酷い目に遭ったり、子供の幸せを考えない守銭奴の両親が悲惨な最期を迎えたとしても、それで「ざまぁ」と思うかといえば、それは違う。他人の不幸を喜ぶ気持ちにはなれない。人のことなんか、もうどうでもいいのだ。
「いっそ、列車の下敷きになって死んだ方が楽かもしれない」
 ラレデンシィー・ナッヴァースが、そうポツリと呟いたときだった。ボッカーン! という爆音が鳴り響き、客車が横転した。彼女は座席から転がり落ちた。窓ガラスを突き破ってしまわなかったのは実に幸運だったと言える。それこそ横転した列車の下敷きになって、あの世行きだったろう。
 転がった客車からラレデンシィー・ナッヴァースは急いで這い出た。皇帝が派遣した御付きの召使いたちは彼女のことなどほったらかしで大騒ぎだ。なにか大声でわめき合っている。
 彼らがなにを言っているのか理解できたことは、ラレデンシィー・ナッヴァースにとって幸運だった――いや、これは幸運ではないだろう。彼女の努力のたまものだ。婚約内定後、彼女は自分が嫁ぐ国の言葉を学習した。その猛勉強の成果が出たのだ。
 召使いたちは叫んでいた。
「ただの事故じゃない! きっと山賊の襲撃だ!」
 語学の勉強と並行して、ラレデンシィー・ナッヴァースは嫁ぎ先の国の社会情勢も学んでいた。その結果、首都周辺部以外の治安は最悪であることを知った。
 そんな土地を皇帝の花嫁が旅するわけだから、ラレデンシィー・ナッヴァースを守る警護の者が複数随行していた……のだが、その姿はどこにもいない。列車に乗り込んだときはいたのに!
 ラレデンシィー・ナッヴァースの疑問は、訊かれもしない召使いたち同士の言葉のやり取りで解消した。
「あいつら、逃げたぞ! おい、俺たちも逃げようぜ!」
 そう叫ぶや否や、召使いたちは四方八方に逃げ去った。ラレデンシィー・ナッヴァースは薄情者たちの後を追いかけたが、砂漠の砂に足を取られて転んだ。立ち上がろうとするが、恐怖のあまり手足がもつれ、再び転倒した。必死な思いで立ち上がる。召使いたちの姿は、どこにも見えなかった。その代わりに覆面姿の男たちの姿があった。
 その中の一人がラレデンシィー・ナッヴァースに近づいてきた。身の危険を感じた彼女は反対の方向へ逃げようとしたが、そちらにも覆面の男たちが立っている。その手に銃を見て、彼女は観念した。そのときだった。
「皇帝の新しい花嫁だな」
 背後から男の声が聞こえた。振り返る。鋭い眼をした男が近くにいた。男は言った。
「我々は反政府ゲリラだ。お前は人質だ。抵抗は無意味だ。だが、大人しくしていれば危害を加えない。選択肢は二つ。我々と共に来るか、ここで死ぬかだ。どうする? 好きな方を選べ」
 死にたくなかったのでラレデンシィー・ナッヴァースは反政府ゲリラと名乗る山賊どもに連れ去られた。
 反政府ゲリラを自称する山賊たちは砂漠をラクダで移動した。ラレデンシィー・ナッヴァースは、彼女に投降を呼びかけた男と一緒にラクダに乗った。横転した客車の近くを出発するとき、男は彼女に「ラクダに乗ったことがあるか?」と尋ねた。「ないです」と彼女が答えると「馬に乗ったことはあるか?」と続けざまに質問された。乗馬の体験はあると答えたところ、男は「馬とは少し違うけれど、慣れたら同じように乗りこなせる」と言った。
 それを聞いてラレデンシィー・ナッヴァースは「たとえ山賊の人質になったとしても、隙があったらラクダに乗って逃げ出せるかもしれない」と思った。だが、ラクダに乗って砂漠をしばらく進んでいるうちに、その考えを捨てた。見通しが楽観的すぎたからだ。あまりにも暑すぎる。山賊の巣窟から脱出したところで、照りつける砂漠の太陽に焼かれて熱中症になるのが落ちだ。そもそも彼女は、この土地に不慣れだ。砂漠では方角が分からない。迷子になったら、死ぬ。死にたくなければ、山賊の元から離れないことだ。
 暑さのせいでグロッキーなラレデンシィー・ナッヴァースを気遣い、反政府ゲリラの山賊たちは何度か休憩を取った。砂漠に点在するオアシスで彼らは休んだ。石で囲んだ井戸からくみ上げられた冷たい水を飲むと、彼女は生き返るような気持ちになった。彼女の白絹のような皮膚は炎熱のために酷い水膨れになっていた。目は細かい砂や白く輝く砂礫からの激しい照り返しのせいでやられ、ずきずきと痛んだ。
 これ以上は、もう耐えられない……とラレデンシィー・ナッヴァースが覚悟を決めた頃、反政府ゲリラの山賊たちは停止した。場所は、不格好な山の崖の下である。そこに洞窟があった。その洞窟が彼らのアジトだったのだ。彼女はラクダから下ろされた。半死半生の有様だったので、彼女と一緒にラクダに乗っていた男がお姫様抱っこで洞窟内に彼女を運び込んだ。
 日暮れが迫っていた。反政府ゲリラの山賊たちは食事の準備を始めた。調理の匂いでラレデンシィー・ナッヴァースは目覚めた。その国の男たちは料理はしないと聞いていたので、意外に思った。小麦粉らしき粉を水でこねて、耳たぶ程度の柔らかさにして厚く広げ、薪を燃やした灰の中に埋める。それが焼けると火の下から引っ張り出して、灰や埃を両手の間で何度か投げて落とし、それからナイフで切り分けた。
 ラレデンシィー・ナッヴァースをお姫様抱っこした男が切り分けられた調理品を持って彼女の近くへやって来た。
 彼はどうやらラレデンシィー・ナッヴァースの世話役らしい。男は、その熱々のパンらしき物体を彼女に手渡した。
「飲み物がある。今、持ってくる。デザートにナツメヤシがある。食べてくれ」
 パンのような物を受け取ったラレデンシィー・ナッヴァースだったが、飲み物を受け取るのは躊躇した。皮の水筒に入っている液体の正体が分からなかったからだ。変なものを飲まされたら、どうなるか分からない。彼女は、そのことを拙い外国語で男に伝えた。男は言った。
「女一人どうにかするのに、小細工は不要だ。それより水分の摂取を心掛けてくれ。ここで脱水症を起こされても困る」
 だが、ラレデンシィー・ナッヴァースには別の不安があった。自然の呼び声があったら、どうすればいいのか!
 モジモジし始めた彼女に男は言った。
「用を足したいのなら、同伴させてもらう。見張りはさせてもらう。逃げないようにな。それに、夜は猛獣が出る。ここで死なれたら人質にならないからな、警護する」
 勝手にしろ、とラレデンシィー・ナッヴァースは心の中で吐き捨てた。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 ここまでの原稿を読み終えて、ナッヴァースは言った。
「続きは? アールース、続きを早く読ませてくれ」
 親友から催促されたアールースは物憂げな表情で窓の外を見ていた。鉛色の空の下に横たわる、泣き叫ぶ乙女の像を頭上に頂いた尖塔が並ぶ沈鬱な街を、ナッヴァースも一緒になって見た。すぐに飽きた。
「次の原稿を、はよ」
 要求が聞こえていないかのようにアールースはハバロフスク産のリンゴ酒を啜り、それからハバナ葉巻を一服した。
「次の原稿を、早く読ませろっての」
 そう言ってナッヴァースは水タバコを吸った。続けざまに吸って、また言った。
「早く、早く、早く、早く原稿を読ませろよ」
 ハバナ葉巻の紫煙をブワッと吐き出してアールースは言った。
「書いてない」
「あ?」
 ちょっと間抜けな印象を与えかねない返事をしてしまったナッヴァースに、アールースは申し訳なさそうに繰り返した。
「続きをね、うん、続きはねえ……まだ書けていないんだよ」
「んばあっ、そんなんで大丈夫なのか?」
「うん……そうだねえ」
「間に合わないぞ、締め切りに」
 ナッヴァースが指摘しているのは、とある小説コンテストの締め切りが迫っているということだった。小説家志望の友人アールースは、その公募に出すための原稿をナッヴァースに読ませ、感想や直すべき点を指摘してもらっていた。その原稿の完成が遅れているのだ。
 このままでは間に合わないと、ナッヴァースは重ねて言った。アールースは物憂い声で答えた。
「実はね、そこで相談なんだよ」
 リンゴ酒の入ったグラスを干したアールースは、ナッヴァースを見つめた。
「一緒に続きを考えてくれないか?」
 ナッヴァースは窓の外を一瞥した。雨が降りそうな空模様だった。雪になるかも、と彼は考えた。そうなる前に帰りたい……だが!
「そう言われると、放ってはおけないな。分かった、一緒に続きを考えよう」
 アールースとナッヴァースは作戦会議を始めた。
 まずアールースが口火を切る。
「ここまでのところは、どうだろう? 駄目と言われても困るけど」
「そうだな、直している時間がないよ」
「でもね、根本的なところで、直さないといけない感じなんだ」
 不安を隠し切れない様子でアールースが言った。
「そのイベントはね、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだよ」
 ナッヴァースは訝しげに尋ね返した。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ?」
「そう、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジさ」
「早口言葉かよ」
「それとは違うけど、とにかく、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジなんだって」
「ふうん」
「そういうことなんだ」
 納得しかけたナッヴァースだったが、また質問する。
「ところで、その恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジって、なんなの?」
 アールースは驚きを隠さなかった。
「え、知らないの!」
「うん」
「本当に? 本当にそうなの!」
「うん」
「知りもしないで原稿を読んでいたの」
「いや、全然知らないってわけではないよ。締め切りが近いってことは知ってた」
「それ以外は?」
「全然」
 首を横に振るナッヴァースに、アールースは説明を始めた。
「恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジというのはね、恋愛ファンタジーがテーマの小説コンテストなんだ」
「へー」
「シチュエーションというのは、色々なシチュエーションを小説化するという意味なんだ」
「まあ、それは予想がつくよ」
「シチュエーションレベルアップチャレンジというのは、そのシチュエーションにはレベルがあって、そのレベルというのが三段階あるということなんだ」
 分かったような分からないような説明だった。言っているアールースも、分かった顔をしているけれど実際には分かっていない様子である。ナッヴァースは再確認を促した。
「そこが大切なところじゃないの? ちゃんと調べてみたほうがいいよ」
「そうだね。その前に水分を摂取しておくよ。この時期は空気が乾燥していて、喉が渇く」
 アールースはハバロフスク産のリンゴ酒のボトルを持ち、テーブルの上のグラスに注いだ。
「ナッヴァース、君も飲むかい?」
 ナッヴァースは断った。
「気持ちだけ受け取っておくよ。アルコールが入ると、文章が変になることがあるから」
「こっちも執筆するんで、酒は控えておいた方がいいかも」
「小説家の山田風太郎は、お酒を飲みながら書いていたようだけどね」
「だから面白い話を書けたのかもね」
 しばらく雑談をしていた二人だったが、状況が切迫していることを思い出し、執筆に向けた作戦会議を再開した。
「オーケン、じゃない、オーケー、始めよう」
 アールースがのっけから言い間違ったことに不安を抱きつつ、ナッヴァースは水タバコを吸った。
「よし、やろう。まずは、恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジの募集要項をチェックしようか」

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恋愛ファンタジーシチュエーションレベルアップチャレンジ

イベント概要
この冬のベリカフェは寒さに負けない溺愛を♡

レベル&シチュエーションに沿った「恋愛ファンタジー」作品を募集します!

「ファンタジージャンルはチャレンジしたことがなくてハードルが高いかも…」

そんな作家さんのために、シチュエーションに合わせやすいキーワードをご用意いたしました!

心ときめく、甘さたっぷりの恋愛ファンタジーをお待ちしています♡

シチュエーションに沿っていればキーワードにない設定でもOKです!

また、ベリカフェ初投稿作品であれば既存作品でのエントリーも大歓迎!

全レベルにエントリーいただいた方を対象とした「フルコンプ賞」にもぜひチャレンジしてみてくださいね♪

エントリー作品を読む
①シチュエーションを選ぼう!
レベル1 『シンデレラストーリー』

ラブファンタジーの王道、シンデレラストーリー!

ファンタジージャンルに初めてチャレンジする作家さんにもおすすめです♪

溺愛満載のストーリーにヒーローの魅力をたっぷり詰め込んでください♡

おすすめキーワード

#シンデレラストーリー #溺愛 #不遇

レベル2 『セカンドライフ』
突然の婚約破棄、追放、はたまた婚姻やヒロイン自らの申し出まで⁉

様々な理由から始まるセカンドライフをお待ちしています!

ヒロインの能力や職業を活かしたストーリーを書きたい方に♡

おすすめキーワード

#セカンドライフ #第二の人生 #婚約破棄

レベル3 『身代わり婚』
仕える王女様、婚約者のいる姉、わがままな妹…

国や家のため、様々な人の身代わりになるヒロインを大募集!

身分差や切ない恋と相性抜群です♡

おすすめキーワード

#身代わり婚 #成り代わり #身分差

②選んだシチュエーションに好きなキーワードを組み合わせよう!
ヒロイン

虐げられ・捨てられ・崖っぷち・姉妹格差・愛を知らない・不遇な境遇

悪役令嬢・悪女・王妃・妾・侍女・メイド・転生幼女・男装令嬢

聖女・薬師・魔道具師・錬金術師・魔女・料理人・スキル持ち

ヒーロー

皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長

爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジ

その他

断罪回避・異世界転生・番・歳の差・身分差・白い結婚

もふもふ・スローライフ・逆転ストーリー・ざまぁ

①で選んだシチュエーションに沿っていれば、ここに書かれていないキーワードでもOK!

応募要項


レベル賞 〈レベルごとに1作〉

デジタルギフトカード5,000円分

フルコンプ賞〈全レベルに作品を1作以上エントリーした方の中から抽選で1名〉

デジタルギフトカード5,000円分

各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。

参加賞〈全エントリー作品の中から抽選で20作〉

電子図書カード1,000円分

テーマ

3つのレベルから好きなシチュエーションを選択していただき、あなたが思い描くラブファンタジーを書いてください。

キーワードは複数組み合わせていただいても構いません。選んだシチュエーションに沿っていれば、オリジナルの設定を追加することも可能です。

スケジュール

2023年12月20日(水)13:00 エントリー開始
2024年1月31日(水)13:00 エントリー〆切(部門賞・フルコンプ賞は完結〆切)
2024年3月上旬頃 結果発表

スケジュールは変更になる可能性があります。

応募資格

不問(プロ、アマ、年齢等一切問いません)

応募方法

STEP1

エントリーしたい作品の【作品編集】から、【設定】画面のコンテスト応募、ベリーズカフェ恋愛ファンタジーレベルアップチャレンジを選択します。

STEP2

エントリーする部門(レベル)を選択、あらすじを入力してください。

STEP3

ページ最下部の【設定を保存する】ボタンを押すとエントリー完了です。

事前に会員登録の上、作品投稿をお願いいたします。
あらすじとは、ストーリーの全容、登場人物の設定や大きな流れを簡潔に明記したもので、あらすじの内容を元に審査を進めさせていただきます。
コンテスト応募のあらすじは、他のユーザーには公開されません。(エントリー締め切り日まで編集できます。)
原稿枚数

Berry's Cafeにて文字数1万字~12万字以内に収めてください。

対象

応募サイト「Berry’s Cafe」でファンタジージャンルに設定され、読むことができる作品。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品に限ります。
部門賞、フルコンプ賞の対象は完結作品に限ります。参加賞は未完結でも対象となります。

以下に該当する作品のエントリーは不可となります。

「Berry’s Cafe」の規約に反するもの
過去に書籍化されたもの
書籍化の予定があるもの
本人以外に著作権及び著作隣接権があるもの
現在開催中である他のコンテストに応募しているもの
そのほか当編集部が不適切と判断したもの
注意事項

コンセプトに準じた作品であれば、複数エントリーしていただけます。
フルコンプ賞は各レベルにそれぞれ異なる作品をエントリーされた方が対象です。同一作品をエントリーされた場合は対象外となります。
「Berry’s Cafe」に初投稿の作品であれば、既存作品での応募も可能です。
既に他のサイトで発表されたものも応募可としますが、著作権および著作隣接権が完全にフリーであることを条件とします。

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 応募要項に目を通したナッヴァースが言った。
「最大のポイントは恋愛ってところだな。違うかい?」
 アールースは否定しなかった。
「それが必要最低条件って感じだね」
「その必要最低条件というのが正しい用語なのかはともかく、言いたいことは分かる。最低限クリアすべき条件ってことだね」
「そう、その通りなんだけど……」
 言葉に詰まったアールースの思いを、ナッヴァースが代弁する。
「恋愛の要素がないよね」
「そうなんだよ」
「ロマンスが入ってないとアウトだ」
 硬い表情でナッヴァースが断言すると、アールースは顔を両手で覆った。
「そこなんだよ、そこで弱っているんだ」
 続いてアールースが天を仰ぐ。
「女性主人公は書いた。自分なりにだけど、魅力的なヒロインを造形できたと思う。自分なりに、だけど」
「まあ、人によって魅力は異なるから、そこは拘らなくていいと思うよ。うん、これで十分に魅力的だよ」
 ナッヴァースの励ましがアールースの自信を多少なりとも回復させたようで、やや明るい顔で話を続ける。
「相手役をどうするか、これに苦しんでいるんだ」
「う~ん、ここに書いているもののうちから、適当に見繕って出せばいいんじゃないの?」
「おでんを頼んでいるようにはいかないよ」
 ナッヴァースは<ヒーロー>の項目を見返した。
「皇帝・王子・皇太子・竜王・獣人・竜騎士・騎士団長、か」
「爵位・冷徹・強面・不愛想・仕事人間・紳士・イケオジってのもある」
「人材募集みたいだな。新聞に広告でも出したらどうだ?」
「来られたって困る」
 腕組みをしたナッヴァースが唸る。
「う~ん、読者の好みに合ったヒーローにすべきなんだけど、ヒロインや話の筋に合致させないことにはなあ」
「ストーリーと合っていないヒーローを突然出しても変だよね」
「ちぐはぐだと話し全体が変になってしまうさ。そこで、どうするか、だよなあ」
 ナッヴァースは人差し指を突き上げた。
「他にも重要な問題がある。極めて重大な問題だ」
 アールースは息を呑んだ。ナッヴァースが深刻な顔で答えを告げた。
「時間だよ、とにかく時間が無い。これを忘れたら、この話はお終いになってしまう」
「そう……締め切りの問題があった」
「時間的制限内でヒロインとヒーローをくっつけることを、最優先事項としよう」
 ナッヴァースの出した結論にアールースは同意した。

 × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × × 

 ラレデンシィー・ナッヴァースが反政府ゲリラと称する賊徒の人質になったことは、都の皇帝の耳に入ったことだろう。彼女の解放に向けた交渉あるいは軍事作戦が開始されるはず……と思われたが、皇帝に動きは見られなかった。
 これには反政府ゲリラたちも拍子抜けしたようだった。ラレデンシィー・ナッヴァースにしてみれば、自分が見捨てられたとしか思えなかった。このまま異郷の土となるのか、と彼女は嘆いた――元々、その覚悟で祖国を後にしたのだが、こうなるとは思っていなかったのだ。
 そんな異国の女を同情した男がいた。彼女の世話係である。いや、実際はゲリラのリーダーだった。思いのほか偉い立場だったのだ。彼は同情よりも強い気持ちを抱いたと言っていいだろう。次第に二人は親しくなった。皇帝側からの解放要求がなされず、ラレデンシィーが自分は見捨てられたと気が付いた頃である。ある日、彼は覆面を取り自分の素顔を見せて言った。
「俺たち砂漠の男は女に素顔は見せない。例外は家族の女だけだ。だから自分は今、物凄く恥ずかしい」
 羞恥の頬を染める男は、物凄くイケメンだった。ラレデンシィーの好みの顔だった。彼女は尋ねた。
「それなら、どうして覆面を外したの?」
 イケメンは答えた。
「君と家族になりたいからだ。お願いだ、どうか結婚して欲しい」
 ラレデンシィーは求婚を受け入れた。ラレデンシィーの人質生活は数週間に及んでいた。先の見通しが不安になっていたため、すがるものが欲しかったのだ。しかし、それだけではない。求婚者は皇族の一人で、元は皇位継承権のある王子だったのだが、今の皇帝によって都を追放された過去があると知り、その境遇に親近感を抱いたのだ。自分と同じく、邪魔者として追放された元王子の反政府活動に、妻として協力したいと彼女は思った。
 求婚を受け入れられ喜ぶ美青年に、ラレデンシィーは釘を刺した。
「喜ぶのはまだ早いと思います。私たちの幸福は内戦に勝利し皇帝軍を降伏させて初めて達成されるのです。一緒に戦いましょう」
 その言葉は現実のものとなった。ラレデンシィーと彼女の夫が率いる軍勢は皇帝軍に連戦連勝し、とうとう都を制圧、遂に政権を獲得した。彼女の身代わり婚は、ちょっと予想とは違った逆転ストーリーとなって幕を下ろしたのだった。
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