君となら生きていけるかも
放課後になり出ていってしまった上原君を探す。どこ!?ここの校舎そんなに広くないと思うけど!?!?

「珠姫さん?どうかした?」

私は声をかけてきた女子2人組に急いでスマホで文字を打って画面を見せる。

「上原君?」
「見てないね。」
「どこ行ったんだろうね?」

ぺこっとお辞儀をしてまた捜索を再開する。見つからないかー。もう帰っちゃったかな?人も絶え絶えになってきてオレンジ色の光が廊下を照らす。

「……っ!!!」

待って待って!?あれ上原君じゃない!?走って追いつくか…。いや、無理だ。

「っ……。」

出ない…。声が。なんでこういう時に………。

「っ………。」

行っちゃう…。だめっ!!

「ぅぇ………は…ら……………くっ…………!!」

っ………!で、た……!!でも小さくて届かな……。

「……珠姫?」
「っ………!」

聞こえた………。私は安堵でその場に座り込む。

「え、珠姫!?大丈夫か?」
「ぃ……かな……で。」

え。と小さく声を漏らして私の横にしゃがむ。

「嫌わない………でっ…………。」
「え、嫌ってないよ?」

………え?でももう近づかないでって…。

「ぁ……え?」
「嫌ってないよ……。」

さっきより優しく言う。それがジーンっときちゃって視界が滲む。

「え、珠姫!?なんで………。」

おろおろしながらも袖で私の涙をふいてくれる。

「嫌われた……か、と……思っ………たっ。」
「……避けてたからだよね?」

こくこくと頷く。

「珠姫、フォークって分かる?」
「?フォークって……あの?」
「うん。俺がそうなんだ。」

俯きがちに喋り出す。

「ずっと一緒にいて何ともなかった訳じゃなかった。でも抑えられる範囲だったんだ。だから一緒にいても何も問題なかった。けど最近は抑制剤じゃ、食べたいって衝動を抑えきれなくなったんだ。」

抑制剤とはフォークがもし、ケーキに出会ってしまった場合、襲ってしまわないようにする薬だ。知らなかった。上原君が飲んでたなんて…。

「その、言いにくいんだけど珠姫はケーキだからさ。」
「ぅえ……。」

まぁ、この前の上原君の様子見たあとじゃ否定出来ないよね。

「じゃ、………わ、たしのフォークは………上原……君?」
「え、……………。」
「ち、がうの?」

じっと上原君の目を見る。

「そう、だっていったら……俺とずっと一緒だよ?」
「そう、だろうね……。別に好きな、人もいないし……いいよ。」

私は立ち上がって上原君に言った。

「いいの、本当に。」
「いい、よ。でも………最後まで一緒……ね?」

目を見開く上原君。私の事途中で見捨てたら許さないから。

「…………わかった。それはそうと珠姫、声……。」

あ、そうだ。私、人前では声出せなかったはずなのに。少し出にくい感じはあるけど家と同じように声が出る。

「……でも、上原君……だ、から声…。出たの、かも……。」
「えっ…?」
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