名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(本当にいいのかな……)
何も言わずに黙って立ち去るという選択肢もある。
貴方の娘ですと伝えれば、國治の人生に余計な波風を立てることになる。
病に倒れ、政治家として華々しく活躍する場を失った彼に追い討ちをかけるような真似をしたくなかった。
しかし、雛未は穏便に済ませたいという甘い考えをあえて捨てた。
(最初から全部覚悟していたじゃない。私は私の目的を果たそう)
この頃の雛未は、純華の代わりでもいいから祐飛の傍にいたいという恋心と、一刻も早く真実を解き明かし故郷に帰りたいという気持ちで板挟みになっていた。
――自分が惨めでしかたない。
最初から祐飛は雛未のことなど眼中になかったのに。
こうしている今も祐飛の心は純華に囚われ続けているのに。
愛されたいといくら望んでも叶わないのに。
――まだ、名ばかりの妻がやめられない。
どう足掻いても祐飛の気持ちは変えられないのだと思うと、胸が引き裂かれそうだった。
こんな想いをしてまで、祐飛の妻として病院にとどまり続けているのだ。
真実を聞かなければ、何のために結婚したのかわからなくなる。
ところが、雛未の思いとは裏腹に、祐飛はなかなか話し合いの機会を設けてくれなかった。