名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 ◇

「祐飛さん、まだダメなの……?」
「もう少し、様子を見させてくれ」
「この間もそう言っていたじゃない!」

 祐飛が帰宅して早々、雛未は声を荒らげ食い下がった。
 國治が目覚めてから一ヶ月が経とうというのに、祐飛は彼の身体への負担を理由に、雛未との約束を反故にし続けていた。
 本人と接する機会もある雛未には、國治の体調は既に回復しているようにしか思えなかった。
 今度、また今度と、先延ばしにされ、雛未は怨がましく祐飛を睨みつけた。

「私はいつまで待てばいいの……!?」
「……わかっている。必ず約束は守る」

 バツが悪そうな祐飛の顔を見て、ようやく言いすぎたことに気がつく。
 
「ごめんなさい!祐飛さんは患者さんのことを第一に考えているのに、私は……」

 慌てて謝ると祐飛は気にするなとばかりに、雛未の髪をわしゃわしゃとかき混ぜだ。
 浴室に入っていく祐飛の姿を見送ると、雛未はまたため息をついた。

(もうやだ……)

 最近は祐飛ともこんな調子でギクシャクしている。
 自分で自分が嫌になってくる。何もかもが上手くいかない。
 祐飛の前では素直で可愛い自分でありたいと思っているのに、口をつくのは彼を責めたてる言葉ばかり。
 祐飛は雛未が純華の代わりだとおくびにも出さず、常に礼儀を尽くしてくれる。

(ダメなのかもしれない……)

 雛未はテーブルに突っ伏した。
 雛未が苛立っていたのは、話し合いの機会を設けてもらえないことだけが原因ではない。

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