名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
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「祐飛さん、まだダメなの……?」
「もう少し、様子を見させてくれ」
「この間もそう言っていたじゃない!」
祐飛が帰宅して早々、雛未は声を荒らげ食い下がった。
國治が目覚めてから一ヶ月が経とうというのに、祐飛は彼の身体への負担を理由に、雛未との約束を反故にし続けていた。
本人と接する機会もある雛未には、國治の体調は既に回復しているようにしか思えなかった。
今度、また今度と、先延ばしにされ、雛未は怨がましく祐飛を睨みつけた。
「私はいつまで待てばいいの……!?」
「……わかっている。必ず約束は守る」
バツが悪そうな祐飛の顔を見て、ようやく言いすぎたことに気がつく。
「ごめんなさい!祐飛さんは患者さんのことを第一に考えているのに、私は……」
慌てて謝ると祐飛は気にするなとばかりに、雛未の髪をわしゃわしゃとかき混ぜだ。
浴室に入っていく祐飛の姿を見送ると、雛未はまたため息をついた。
(もうやだ……)
最近は祐飛ともこんな調子でギクシャクしている。
自分で自分が嫌になってくる。何もかもが上手くいかない。
祐飛の前では素直で可愛い自分でありたいと思っているのに、口をつくのは彼を責めたてる言葉ばかり。
祐飛は雛未が純華の代わりだとおくびにも出さず、常に礼儀を尽くしてくれる。
(ダメなのかもしれない……)
雛未はテーブルに突っ伏した。
雛未が苛立っていたのは、話し合いの機会を設けてもらえないことだけが原因ではない。