まどろみ3秒前
それでも、朝くんは優しい口調で羊を数えていく。気づいたら、私も一緒に数えていた。
「羊が、しつじが、いつじが、棺が…」
『え、ひ、棺?最後怖いんだけど』
「ほんとに、眠たくなってきて…すごい朝くん…ごめんなさい…」
『なんで謝んの。…ふふ、おやすみ』
「…あさ、くん」
『ん?なに』
瞼が重い。私は最後を振り絞って言った。
「待ってて…ください…長く、眠りに落ちても」
わかるんだ。私が、日を跨いで何時間も眠ることが。何時間も時間を無駄にする。皆が生きる中で、私だけが生きられずに呑気に眠っていることだろう。
『…ん、待ってる』
彼は余計なことは何も言わず、ただそう言ってくれた。
電話はきれる。私は、瞼を瞑る。私は、眠りに落ちる。
頭の記憶にはずっと、朝くんだけがいた。
優しく笑うとこ、甘い口調になるとこ、クールな雰囲気出してるくせに全然クールじゃないこと、眠れない私に、うるさいくらい羊を数えてくれたこと。
私は朝くんのために朝を生きたいと思えたよ…
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「ほら、起きて」
誰かが、私の肩を揺さぶる。
「おはよ」
誰かは、私を見て笑う。でも決して、バカにした笑い方じゃなくて、優しく笑っていた。
「寝癖すごすぎ」
寝癖は治らないくせに、私の頭を優しく撫でた。
「あなたは、誰なの?」
私は、誰かにそう言った。
誰かは、優しく微笑んだ。