まどろみ3秒前
「これ使わなくなったからあげるわ」
「たんご、ちょう?タンゴチョウ?」
「単語帳初めて見た外国人かよ」
「あ、いやいや。高校英語の単語帳?いいの?東花、使わないの?」
「俺はいい。お前、単語覚えんの苦手だろ?こういう単語帳使った方がいい」
「えーありがと」
渡された単語帳をまじまじ見つめてペラペラと慣れない単語帳を開いていく。そんな私の様子を見て、東花は何故かふっと笑っていた。
自分の手の甲を隠すようにして。少なくとも、私にはそう思えてしまった。
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―次に起きると、修業式が終わっていた。春休みだった。
高校2年はあっという間に終わった。いや、寝て起きたら終わってた。
外を出歩けば、春の匂いがした。冬の匂いではない。朝に香る、優しい桜の匂い。
気温も温かくて、まるで空を浮いているような感覚であった。見上げる青い空は、何も変わらないでいてくれた。
近くの公園には、ピンク色のものが突き出ている。桜が、咲き誇っているのだ。
私は運がよかった。満開の桜を見る日に、今日という日を目覚めることができて。
綺麗で、綺麗すぎて、言葉にできない。いや、言葉になんかしてたまるか。
こんなにも、桜は綺麗だった。
前に見たどの桜よりも、綺麗だった。