まどろみ3秒前
はっと扉に目を向ける。だが、私の望んでいた人物ではなかった。車椅子に乗ったおばさんが、皺の寄った表情をこちらに向ける。
「なに、あなた!?大きな声を出してるのは!!ここ響くの!うるさいわねぇ!!」
怒鳴り声が雨の音と共に降ってくる。体が暑くて、涙が蒸発しそうだった。涙が頬を通りすぎていく。ポタリと、涙が膝に落ちた。
「違う………」
もう、来ないんだね。
私を、待ってくれてる人なんていなくて。
誰にも覚えられてなくて。
運命の人とか、私を起こせる人はいなくて。
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眠る前、病室に念のためと持ってきていた赤い傘が役に立った。
暗く、厚く覆われた頭上から、止みそうもない雨が降り続ける。空から降り落ちる雨は、傘に容赦なく落ちていく。傘を殴るような、鈍くて強い、音がした。
大雨警報が出てもおかしくない。雨のせいで霧のような靄が出ている。見渡すが、外を出歩いているのは案の定、私しかいない。それでよかった。
雨のおかげだ。夏の青空も、夏の匂いも、雨の空と音が消してくれる。
少し温度が高いくらいで、夏を感じられることはほとんどなかった。