まどろみ3秒前
―カリカリ、カリカリ…
爪で壁をかく嫌な音がして、思わず耳を塞いだ。自分の部屋の扉に近づく。
そして、ふわふわしている生き物を持ち上げる。肉球には、怖いことに鋭い爪があった。
「ひる」
ひる…昼。
自分は朝という名前から、昼のひるにした。ひるとは、ふわふわで大きな猫である。
ひるは、俺の姉が捨てようとしていた。
大きくなったから。可愛くなくなったから。世話が面倒くさい。そんな理由で、保健所に電話していた姉を俺は止めた。
生き物は、必ず死ぬ。
そんな運命だから、悲しくなる。
でも、姉を止めたのは自分だ。ちゃんと、世話をして、この猫には幸せになってもらいたい。
俺に持ち上げられても、呑気に眠そうに口を開けている。オスだし、人間になったら兄弟みたいな友達になれるかもしれない。
「かわい」
ぎゅっと、胸に抱き寄せた。
゜
゜
゜
「えーっと、不眠症?」
「…はい」
バカらしい。こんなことで病院に来るとか。自分でも、わかっていた。