まどろみ3秒前

―カリカリ、カリカリ…


爪で壁をかく嫌な音がして、思わず耳を塞いだ。自分の部屋の扉に近づく。

そして、ふわふわしている生き物を持ち上げる。肉球には、怖いことに鋭い爪があった。


「ひる」


ひる…昼。

自分は朝という名前から、昼のひるにした。ひるとは、ふわふわで大きな猫である。


ひるは、俺の姉が捨てようとしていた。

大きくなったから。可愛くなくなったから。世話が面倒くさい。そんな理由で、保健所に電話していた姉を俺は止めた。


生き物は、必ず死ぬ。

そんな運命だから、悲しくなる。


でも、姉を止めたのは自分だ。ちゃんと、世話をして、この猫には幸せになってもらいたい。


俺に持ち上げられても、呑気に眠そうに口を開けている。オスだし、人間になったら兄弟みたいな友達になれるかもしれない。


「かわい」


ぎゅっと、胸に抱き寄せた。








「えーっと、不眠症?」

「…はい」


バカらしい。こんなことで病院に来るとか。自分でも、わかっていた。
< 50 / 426 >

この作品をシェア

pagetop