魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「最初に魔女の集落に行って、今魔女が作ってるっていう薬を確認させてもらいたいんだ。僕はそれを参考にして、魔女でも作れる特効薬を考えるよ。それから王都中に配れる量の特効薬を作って、王宮に納品してこよう。どう?」

「ばっちりだと思います。ああ、魔王様には感謝してもしきれません」

「じゃあ、僕にこう言ってくれる? 『一緒に人間界に行って、国王の願いを叶えてほしい』って」

「あっ、そうしたら対価が必要になるんじゃ……」

「これはもらうつもりないよ。国王からの願いに付随してることだから。でも、魔王城に帰ってきたら、今度こそ君の本当の名を教えてね」

 王女はうつむいて、小声で『はい』と返事をした。

 嘘の名前を告げたことを恥じているのかもしれない。

(人間界を再訪問できて、なおかつ王女の心もつかめて……ああ、顔がニヤける!)

 王女が魔王のセリフを復唱している間、魔王はさり気なさを装って手で口元を隠した。

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